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「今思えば、あの本買ってきた時、とどめを刺されたと思った。」
「あの本?」
「そーだよ!なんか死に方とか、人体のなんちゃらとか訳わかんない本!あれもらった時、死ねって言われてるんだと思った…!」
「………そんな本あげたっけ……?」
「覚えてないの……。なかなかのダメージだったんだからね。」
はぁ、と大きなため息をつきながら、ありえない。って顔を向ける。
あれから数ヶ月。真尋のオカルト好きの勢いは、以前よりも落ち着いた。元々、悩みに対する答えを見つけるために始めたことだから、触れる事でまた深く考えてしまいそうになるみたいで。この事もあって、部活も月に何回かの活動になり、毎日何かに追われることも無くなったようだ。
前までは、俺が真尋のオカルト話を一方的に聞くことが多かった。けれどそれが無くなった今、不意に訪れる沈黙の時間を変に意識してしまう。
何話そうかな。とか考えてみたり、真尋の行動を目で追ってみたり、なんだか付き合う前の様な感覚がむずがゆい。
「でも、俺もあの時まじで真尋がいなくなるかも。って思ったよ。」
未来を思わせるような夢だった。
今思えば、真尋からのサインだったのかも。なんて考えてしまう。夢を通じて相手に助けを求めるなんて、本当、誰かが好きそうな話だ。
「まーね。俺もあの時はどーかしてたと思う。
でも、よかった。あの日伊澄が来てくれて、俺の話を聞いてくれて。」
「あのおかげで、"今"をちゃんと見ることができてる。
これからの心配をしてたって、しょうがないもんね。まだ完全に不安は取り除けないけど、怖くなったら目の前のことを考えるようにしてる。」
「そう、良かった。」
もたれかかっていたフェンスがかしゃん、と音を立てた。
伏せていた目線を上げると、鼻が触れ合うくらいの距離に真尋がいて、ぴくりと肩が上がる。
「だから、今の気持ちを大切にするね。」
「……んっ、ぅ………〜〜っ!これ以上は、やばいからっ。」
密着した身体を引き離そうと肩を押すと、その上から手を重ねられる。
「え〜〜。誰もいないからいいじゃん。」
「学校ではしたくない。」
「そんな事言われたら、また不安になっちゃう………。」
「………あほか。」
こみ上げた笑いをこぼすと、それに釣られて真尋も微笑む。
「…_____。」
「なんか言った?」
「んーん、なんでも…!」
夢の中で君に助けを求めたのは、また別の話。
-end-
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