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⑥
次の日、やっぱりと言うか案の定
二日酔いと腰の痛みのダブル攻撃で歩くのもしんどい
会社に着いた時には体は重いは、睡眠不足も祟ってグッタリ
こんな状態で仕事に身が入らないのは分かってはいるが…
「部長ッ、おはようございます。あの、少しお話しよろしいですか?」
出社した理由は…
「おお、おはよう。ん?荒木、顔色良くないぞ」
「あーー…昨日、呑み過ぎで…で、話しなんですが」
直談判する為。
いけない事だと分かってはいる
あいつの事を思えば俺が口出す事じゃねぇのは分かってはいるが…
「佐和の件です」
朝起きて昨日の酔えなかった理由がハッキリした
強いストレスや悩み事があると強い酒でも酔えなくなると…
「その……あ、あいつにまだ教えてやりたい事がありまして、このまま俺の下に付けて貰いたいんですが……」
「珍しいな、お前が…」
「す、すみません」
俺だって信じられない
仕事で色々と教えてやりたいのは本当の事だが
嬉しそうな顔して向ける笑顔とか、絶妙な気遣いようと、俺の胃袋ガッチリ捕むあの手料理
いつの間に訳分からねぇぐらいに絆されて
あいつに触られるたび、あり得ねぇ事に身体が受け入れ始めて
それが心地よいとも思えて来て
今じゃ、堪らなく気持ち悦いとか…
(俺の方があいつから離れられなくなっちまってるとか、言えるかッ)
「謝るな、そうか……言ってくれてありがとうな。この話は先方に断っておくから安心して良いぞ」
これで良かったのか、分からない
いや、分かった事が1つだけある
上司である俺が部下の異動を取り消す事自体
パワハラ……かもしれない
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春は出会いと別れの季節
思ったより愛されていましたよ、佐和くん!
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