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「森課長すみません、退いてください」 同期? 知り合ったのが俺より早い? (そんな過去なんか、知らないっつーの) ゆっくり荒木課長に近づき 耳元で優しく囁く 「課長、帰りましょう」 「ん〜、さ…佐和ぁ…」 「お、おい荒木ッ」 俺の声に反応して顔を上げた荒木課長が、トロンとした目を向け、甘えるように首に腕を回してくる 首に顔を埋めスリスリと擦り寄る感じは猫のようで、前回と同じく縋り付いてくれた嬉しさに 俺も思わずしがみついた 「森課長、今は俺の方が荒木課長と仲が良いんでッ。では、失礼します!」 牽制とも先制とも言える、自分としては攻撃的な言葉 そんな普段言わない言葉を 目を見開き驚く森課長に言っていた (だれが渡すもんかッ) ズッシリと重みがある体格の良い荒木課長を抱え、立ち上がる 俺の方こそ上司と部下を逸脱している行動 それでもいい バレたって構わない 荒木課長に対する想いを自覚した時から、揺らぎようがないから。 それに森課長の目を見た瞬間に理解していた この人も俺と同じだって事も。 だから、内心焦りもする そんな俺に荒木課長を連れて出ようとした個室の奥から… 「面白いね。あ、そうそう佐和… 出張、頑張って下さいね」 背を向けていたから森課長の表情は見えなかったが、後ろから投げ掛けられた言葉に 俺は苦虫を噛み潰したような表情が自然と出てしまう 1週間 これほどまでに仕事をボイコットしたいのは初めてだった ■■■■■■■■■■■■ 佐和くんにとっては気が気じゃない人物が登場です。さてさて佐和くんの出張中、どうなる事やら。

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