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③
「はッ、…な、に言って…、部下と上司以外…なにがあるって言うんだ」
森に痛い所を指摘されて、心拍数が上がる
それよりも森がなんで俺と佐和の事を知っているのか
焦りからかじんわりと体の中心から熱を発していて、ネクタイを緩めていた
「荒木、ネクタイ緩めると見えるぞ、ここに…」
キスマークが…
と、そう呟かれ…
こじんまりとした個室だから、テーブルを挟んでも手を伸ばせば届く距離
森の指が首筋に触れてきて、思わず佐和が付けたであろうそれを隠す様に、手を充てていた
「くそッ、あれほどつけるなってー…」
「はぁ〜…やっぱりか。キスマークなんて付いて無いよ」
「なにッ…計ったな」
墓穴を掘った
相変わらず嫌な性格をしている
これ以上誤魔化そうとしてもしなくても、コイツにはもう分かっているんだろう
ここまでか…と観念し、大きく息を吐いたのち…
「佐和には……好きだ、と言われた。……が、それには応えていねぇよ」
男同士というのもあるが、15歳ほど歳が離れ、周りから信頼信用もされた未来ある若者を、どうこうしようとは思ってはいない
離婚歴があるわ、いつも怒鳴り散らして人望もない俺みたいな奴が隣にいる事自体、おかしいだろう
佐和の隣には、小柄で可愛い女が相応しいというのも分かっている
(分かってはいる、いるんだが…)
ただその気持ちと反対に
俺を慕ってくれる所も、いつも笑顔でいる性格も、仕事では手を抜かない姿勢も
俺が気楽に居れる空間も
あまりにも居心地が良すぎて、手放すのが惜しいとさえも今は感じ…
「じゃあさ荒木…」
自分のダメさ加減に嫌気がさしている所に…
「私と付き合わないか?」
耳を疑う言葉が飛び込んできた
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