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「は?なに、言って…」 「荒木の事だから、佐和を巻き込みたくないとか思っているんだろ?」 「ーーっ」 その通りだ 自分が足枷になるなんて、反吐が出る 「私と付き合っていると言えば、理由は出来るだろう?なに、付き合って見えるようにするだけだから。 佐和もきっと理解してくれるだろうし、ただの部下と上司に戻れるよ」 分かりやすい理由だったら 佐和も納得する…… 「私は世間体を気にもしないが、佐和はそうはいかないだろう?まだ若い、それに仕事が出来るなら尚更… 彼の事を思えば、そう感じないかい?」 佐和を思えば… そうだ、分かりきった事だ… 「今後、荒木のせいで彼が好奇の目で見られても、嫌だろう?」 「ちっ、当たり前だッ」 「だったら、もう答えは出ているんじゃないかい? なに一緒に働くのが気まずくなると思っているんだったら、異動も出来るだろうし」 至極簡単な事… そう答えは出ている 「どうだい、手伝うよ」 森の手が俺の手を握る 救いの手のように思え 優しい微笑みの森にグラリと心が揺れた 「佐和の為に出来るかい?」 ヒナが最初に見たものを親と勘違いする刷り込みのように、佐和も何かの勘違いで今、俺に執着しているだけだろう 俺があいつにしてやれるのは…

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