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④
「だ、ダメとかそう言った事じゃねぇっ。
さ、佐和、お前酔ってるだろッ」
「酔ってなんか……いや、そうですね酔ってます、俺…めちゃくちゃ酔ってます。
だから課長からキスしてもらえるまで帰りません」
「なっ、テメェッ!」
半分も飲んではいない缶ビール
これぐらいで酔う訳ないけれど、無茶な要求をするには酒を言い訳にしても力を借りたい
(子供じみているのは、自分でも分かるけど…)
森課長と張り合うつもりとかじゃない
ただ単に、課長からなにかして欲しかった
俺だけじゃなくて、課長からも俺に触りたい
そう思ってくれたら…
若干の期待と、課長の性格からして無理に違いないそんな諦めとが入り混じったお願いを
「課長っ……お願いします」
もう一度する
「いや、だからッそれは…〜〜っ」
明らかに困惑しているのが分かる
何かと葛藤しているように小さく唸り続け
しばらく沈黙があったあと
「課ちょ…」
「くそったれッ」
俺が声を掛けたと同時に
悪態を吐いた課長が缶ビールを一気に飲んで、飲んで、勢いよく空になった缶ビールを机に置いた
「あーーーいいか佐和ッ、俺もしこたま飲んで酔ったからな。だから、これからする事は一切覚えてねぇ!」
「は、はい」
「覚悟はいいなッ」
腹を括ったのか俺を見据える
その目は鋭く据わっていて、さらに真っ赤に顔を染めていて
顔目掛け向かってきた手を視界に捉えた瞬間
(あれ?俺…殴られる?)
反射的に目を瞑り、体が強張る
そんな俺に届いたのは
「ッ!!!」
痛さや痺れではなくって
震える指先が頬を触り
ゆっくりと唇に柔らかい感触が降りて来た
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