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第6話

「馬鹿……だな。俺って……」  もし、柚木が自分の気持ちを無視して、自分をどうこうしようとしたら、自分の気持ちのようなものが変わるのではないか。  そんな事を思っていた。 「俺は柚木に……」  辛そうであって欲しくないけど、自分へ無理に笑顔を向けるくらいなら辛いんだと言って欲しい。 「でも……」  ここで、柚木を受け入れてしまったら、どうなるのだろうか。  確かに、最初にこの病室で目を覚ました時、陣内は柚木を抱きしめたいと思った。そこに一切の嘘偽りはない。 「でも、それじゃあ、結局、今までと変わらない」  今まで、自分がつきあってきた人間。嫌いじゃないと思い、つきあってきた。その「嫌いじゃない」がやがて、「好き」になる。  偽物、とまではいかないが、思い込みの愛情だったのではないだろうか。 そして、それが長く続く事はないのは陣内が一番、身に沁みている。 「だから煩わしかった」  いつの間にか、その嫌いじゃない人をもっと好きになろうと頑張っていって、辛くなる。それで、今度は、相手の事が好きになれない自分への苛立ちと自分自身、人を好きになる事ができるのかという疑惑に包まれる。  そんな感情に振り回され、ボロボロになった自分はその相手の元から去ってしまう……しまっていた。 「でも、俺は先生に……」 ふと陣内は逢坂を思い出す。 確かに、陣内は女性ともつきあった事もあるし、それなりには身体を重ねた時もあった。 だが、逢坂に弄ばれるように、身体を開発された。 これでは、柚木がいかに陣内を好いているとは言え、柚木は陣内の元から去っていくかも知れない。 「嫌、だ……どうしたら、良い……どうしたら……」  陣内は静かに布団の上で、拳を握りしめた。

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