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第10話

「でも、彼の最期は実に穏やかだったらしくね。彼には俺なんかいなくても、支えてくれる人がいた。俺とは違って、彼の隣にいて、彼を笑顔にしてくれる……そんな人がいたんだ」 そこまでで、逢坂の昔話は終わり、陣内にしてしまった数々の事について話し始めた。 「俺も最近まで気がついてなかったんだけど、陣内君は彼に似てたんだと思う。辛くても、苦しくても、根を上げないというか、本音を打ち明けてくれないというか」 「本音……」 「ああ、本音。だから、だろうね。もう彼と同じ結末にはしたくないって思って。俺は怨まれても良い……怨まれて良いから、君の本心が知りたくて、あんな風に触れてしまったんだ」 長いような、短いような逢坂の告白は「すまなかった」という言葉で終わる。 それは逢坂の勝手な思いとも言えるかも知れない。 だが、勝手だ、不条理だと糾弾するにはあまり逢坂の思いが無償で、純粋で、陣内は胸が熱くなる。そこまで、逢坂に思われていた事に涙腺が緩む思いだった。 陣内はもうこれ以上、自分の事で逢坂を苦しめるのは本意ではなかった。

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