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第11話
「先生……今はなんて言ったら良いか分からないです」
「うん、本当なら何も言ってくれなくても、おかしくないと思う。無理矢理犯したようなものだし、嫌いだと思われても、許せないって思われても、覚悟はできている」
もう俺の前に姿を見せるなと陣内が言えば、逢坂は姿を見せないだろうし、仮に陣内が逢坂の金や命を望んでも、逢坂は何でもないように譲り渡すだろう。
「でも、1つだけ。確かな事があります」
「うん」
「先生が踏み込んでくれなかったら、俺はこの先も誰かを好きになる事はできなかったと思います」
誰かを好きになる事に向き合えずに、自分を好きになってくれた人を傷つけて、大事な人を失ってしまう。
そんな風に考えると、陣内は恐ろしくなる。
「だから、先生には感謝しています」
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