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第15話

陣内は柚木の父に礼を言い、柚木家を後にする。 気づいたら、飛び出していて、駅まで帰って、切符を買っていた。  行き先は東京。柚木の就職する予定の会社から3駅離れた駅だ。  運良く、陣内が乗ろうと思っていた東京行きの新幹線は空席が出て、駆け込み気味に乗り込む。新幹線がいかに早いとは言え、3時間はかかる。 地元から東京へ向かう途中。瞬く間に数ある駅を通り過ぎるのと同様にその時々で思った柚木に対しての色んな感情が通り過ぎていった。 そして、その末に思ったのは柚木と最後に会った時に彼を引き止めなかった事を悔いる。 柚木が言った訳じゃないが、感覚として、どこかで分かっていた筈なのに、引き止めなかった。そんな後悔と今すぐ会いたいと思う強くて、確かな熱望。 僅かに痛みの走る、病み上がりの足を陣内は見つめていた。 『終点 東京』  陣内が東京へ着き、すぐに柚木の借りている部屋のある駅へと乗り換える。  地元とは違い、陣内はさほど苦労もなく、目的地の駅行きの電車に乗ると、ふと携帯電話で時間を確認する。もうすぐ14時になるが、柚木が帰ってくるのは深夜かも知れない。  ただ、待っていれば、いつかは柚木と会える。 「(大丈夫……柚木に会って……今度は伝える)」  陣内は慣れない満員電車に治ったばかりの足を庇い、座り込みそうになるのを何とか、抑える。  そんなに無理をして、東京まで行かないで、地元で待っていたとしても……柚木はまだ明慈大学を卒業していない為、数日もすれば、また会えるとは思う。 だが、今すぐにでも柚木に会いたくて……それが、どんなに無謀な事でも諦める事ができない。  伝える、伝えるんだとまるで、子供のように思うのを止められなかった。

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