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第19話
「柚木が好き。初めて、こんな気持ちになって……ならされて……でも、柚木は好きにならなくて良いなんて酷い事を言って……酷い」
陣内がとうとう、言ってしまった言葉。陣内が柚木を責める様はまるで、子供のようだった。子供のように拙い言い回し。
だけど、子供のように純粋な気持ちだった。
すると、柚木はゆっくりと口を開いた。
「そ、そんな……都合の良い事って……」
陣内とは友人でもいられなくなる。陣内と何のつながりも断たれて、消えて、なくなってしまう。
ある程度、陣内に思いを伝える時に覚悟を決めていたとは言え、その可能性だってゼロだった訳ではない。
飄々とした柚木の心は疑惑と期待で満ちていく。
「僕が好き? ジンが僕を?」
「ああ。1年に2回だけなんか嫌だ。友人なんて嫌、だ」
舌足らずな陣内と滑らかだけど、いつもよりも言葉に鈍さのある柚木。
全く彼らしくなかった。
「ああ、そうだよね。友人なんて僕も嫌だよ。ジンは僕が好きで、僕はジンが……」
好きだから。
その5文字だけの言葉は陣内にとって違う言葉のように聞こえた。
2人はお互いの体を抱き締める。柚木から見て、横を向いた陣内の唇を捕らえる。
「あ……」
壊れ物に触れるくらい繊細な柚木のキス。唇から、目元からあたたかい嬉しさが込み上げてくる。
しかし、その一方で、都合が良すぎて怖い。このキスが終わってしまったら、柚木は陣内が、陣内は柚木が消えてしまうのではないか。お互いにそんな事を考えてしまう。
「柚木……」
唇の触れ合いが終わる。
柚木の唇が離れていく。行き場を失った陣内の唇に使命が告げられる。
「今度はジンがキスして」
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