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第20話

「本当に僕で良いの? 逢坂先生じゃなくて……」  あの陣内の生まれて始めての大告白から1年が経った。柚木は連休を利用して、陣内が待つ地元へと帰ってきていた。  そして、ここは陣内が借りている部屋のある古いアパートだった。 「ああ、先生は友達なんだから」  陣内はあの後、柚木に逢坂からされた事も話した。それは半ば脅迫ではあったものの、身体を暴かれ、自分の気持ちに向き合えなかったら、陣内は一生、恋愛をすることもなかった。  誰かを好きになることもできなかった。 「ジンが良いなら良いよ」 柚木は驚いたが、陣内を受け入れた。 「でも、そんな事があったんだったら、ますます、あの時……ジンが事故に遭った時、僕に電話がかからなかったら、結末が変わってしまっていたのかもね。誰かが誰かとつき合うなんて、それくらい奇跡的なことなんだから……」  自分とつき合っている事が奇跡的なんてやや悲観的に聞こえる言葉も彼を嫌味に見せないから不思議だ。  陣内は不慣れな手つきで荷物をまとめると、柚木はカラカラと窓を開ける。 「あれから1年、経ったよね」 「え?」  まるで、初めて柚木らしくない柚木を知った時のようだと思い、少し陣内は身構えるが、柚木は全く別の事を言い出す。

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