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第4話
「真だって、滑り止めは受かってんだから、そこまで気負わなくてもいいだろ?」
「他人事だと思って言ってくれるよな」
リビングに入ると、両親がキスを交わしている真っ最中だった。
これも見慣れた光景だ。
唯パパの腕の中にすっぽりと納まっているのは、もとはアルファで現在オメガの俺の産みの親、城ケ崎和希。そして唯パパこと、城ケ崎唯人が俺の父親でアルファだ。
「父さん。お腹空いた。今日のご飯なに?」
「まっ、真。夕飯な。今日はお前の好きなグラタンだぞ。直ぐに用意するから」
俺に気付き、顔を真っ赤にした父さんが、一向に離れようとしない唯パパの頭を叩く。
唇を尖らせ、叩かれたところを自分で撫でながら、唯パパがこちらをむいた。
「おっ、樹も来てたのか」
「うん。お邪魔してます。唯人さん、俺も夕飯一緒していいよね?」
「当たり前だろ。食べてけよ。どうせ樹の分も用意しているんだろうし」
「もちろん」
そう言って父さんは椅子に座った樹の前に熱々のグラタン皿を置いた。
「火傷しないようにね」
俺が樹の隣に座ると、同じようにグラタンを置かれる。
「やった。和希さんのグラタン大好き」
樹の言葉に父さんがにっこり笑った。
「樹。帰りにマドレーヌ焼いたから持って帰って。喜美ちゃん好きだろ?」
ケーキ屋でパティシエとして働く父さんの焼き菓子はどれも絶品だった。
「俺の分もある?」
問うと父さんは頷いた。
「今日はアップルパイも焼いたから食後にだすよ」
「やった」
俺以上に父さんの作るスイーツに目がない樹が小さくガッツポーズした。
「樹。あとで俺の書斎に来るといい。読みたがっていた本、貸すから」
「えっ、いいの?あれ発売されたばかりだし、結構高価な本だから」
「樹も読むかと思って、最初から二冊注文しておいたんだ」
「わあ、ごめん。でもありがとう」
「いや、俺も樹の読んだ感想を早く聞きたかったからな」
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