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第6話

「まあ、好きな奴とずっと一緒に居たいって気持ちは分からなくはないけどな」  唯パパはそう言って父さんを抱き寄せると、こめかみにキスを落とした。  父さんが真っ赤な顔で唯パパの胸を押し、距離を取ろうとする。  俺はため息をつくと、立ち上がった。 「ご馳走様」 「真。アップルパイは?」  父さんの言葉に俺は首を振った。 「食欲ないからいいや。明日の朝、食べる」  いつの間にかアップルパイまで完食していた樹も立ち上がる。 「和希さん美味しかった。ご馳走様。真、ゲームの続きしようぜ」 「分かったよ」  部屋に戻ろうとしていた俺の背後から声がかかる。 「真」  振り返ると真剣な顔をした父さんと目が合う。 「外しちゃダメだぞ」  父さんが自分の首を指さしながら言う。  今更なに言ってるんだと思いながら、頷くと俺は樹と一緒に階段を上がり始めた。 「ちょ、ちょっと待って。後ろから来てる。弾、充填して」  画面上に浮かび上がる赤いゲームオーバーの文字を見て、俺は舌打ちした。 「樹。ちゃんと雑魚キャラのせん滅しろよな」 「分かってるけど、ゾンビの移動が速すぎんだもん」  樹が唇を尖らせる。  樹はゲーム好きの癖に下手だった。  一人でやると直ぐにゲームオーバーになってしまうから、俺を付き合わせるのだ。  まあ、今日は合否発表の件でもやもやしていたから、ゲームはいい気晴らしにはなったけど。 「あっ、もうこんな時間じゃん。俺、そろそろ寝るわ。お前も帰れよ」  壁にかけられた時計を見て、俺は大きなあくびをした。 「えっ、もうちょっとくらい、いいだろ?」 「ダメ。明日も学校あるんだし」 「この時期真面目に登校してる奴なんて、真くらいだろ?休んじまえよ」 「嫌だよ。明日、合格発表日だろ?一人で家で悶々としてたくねえもん」 「俺が一緒にいてやるよ。二人でずっとゲームしてようぜ」  ゲーム機のコントローラーを持ってにっこりと笑う樹に、俺は呆れた目をむけた。

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