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第7話
「それはお前が一日中ゲームしてたいだけだろ?」
俺はもう寝てしまおうとベッドに横になった。
「まあ、それも否定しないけど」
うつ伏せになっている俺の上に樹が覆いかぶさる。
「重いって」
小さい頃からじゃれ合って育ったのだから、これくらいのスキンシップは俺達の間では当たり前だった。
「なんでそんなに学校行きたがるかなあ。真、誰か会いたい奴でもいるの?」
「そんなの別にいないけど」
俺は大きく息を吐いた。
学校でクラスメイトの蔵元拓哉(クラモト タクヤ)と親し気に話しているところを樹に見られてから、俺はあらぬ疑いをかけられていた。
蔵元はアルファで金髪、碧眼という漫画の王子様みたいなルックスをしていた。
なんでも祖母がフランス人らしく、その血を濃く受け継いだ蔵元はそんな見た目になったらしい。
それだけでも目を引く存在だが、隣に許嫁の染崎アンナ(ソメザキ アンナ)がいる時、蔵元は余計目立った。
染崎は母親が中東出身のハーフで掘りの深い顔立ちに浅黒い肌、オリーブ色の瞳をしたエキゾチックな美人だった。
二人はともに性格も良く、後輩先輩関係なしに慕われていた。
俺は実は蔵元に、ほんの少しだけ憧れに似た感情を抱いていた。
性格も容姿も絵本から抜け出たような優しい王子様。
その隣に美人な王女様まで居るとなれば、目を奪われてしまい、こういう風になりたいと蔵元を憧れの目で見てしまうのは、男なら誰しも仕方ないのではなかろうか。
「ふうん。大好きな蔵元くんと話したいから真は毎日せっせと学校通っているのかと思ってた」
樹が尖った声で言う。
「そんなんじゃねえって言ってんだろ。大体俺は女のが好きなんだよ」
「じゃあ、染崎目当て?」
「馬鹿。そんなわけないだろ」
俺が仰ぎ見ると、背中に乗った樹と目が合った。
樹はどこか拗ねた顔つきをしている。
昔から樹は俺が他の友達と仲良くしたりすると、決まってこういう表情を見せた。
こういうところは変わらず分かりやすいんだけどな。
俺は背中に乗った樹を振り落とし、横に並んで寝そべった。
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