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第10話

 ワインは飲みやすいが美味いとは思わなかった。  これならリンゴジュースのが美味しいや。  子供だと思われるのが嫌で、その感想は胸の中にしまっておいた。  一口飲んだだけで、頬が火照る。  樹は俺の隣で平然とした顔でワインを飲み干している。 「樹。今日くらい家で夕飯食べなくていいのかよ?」 「別に。合格したことは伝えてあるし」  急遽父さんが買ってきたステーキを食べ、樹が満足そうに微笑む。 「まあ、樹は余裕で合格圏内だったしな。奇跡が起きた真に乾杯」  唯パパが俺のグラスと樹のグラスにまたなみなみとワインを注いだ。 「唯人。てめえ」  低い父さんの声が聞こえる。  ワインをもう一口飲むと、頭がぼんやりとし、目をこすった。  合否が気になって寝不足だった俺の意識はそこから一気に曖昧になった。  目を開けると、ベッドの上だった。  自分で着替えたのか、ちゃんとパジャマを着ている。  腹に重たいものが乗っているのを感じて、体の向きを変えると、樹が眠っていた。 樹がうちに泊まる時は、大抵ベッドの下に布団を敷いていたが、今日は飲んだせいでめんどくさくなってしまったんだろう。  俺も眠気には勝てずにまた瞼を閉じた。  樹っていい匂いするんだよな。  昔から知っているせいか、この香りを嗅ぐと落ち着く。  俺は無意識に樹にすり寄っていた。  樹の腕が俺の腰に回される。  俺はそのまま眠りに落ちた。

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