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第11話
大きなあくびをしながら、リビングに降りると、父さんが朝食を食べていた。
「おはよう、真」
父さんは手早く俺の分も朝食を準備してくれる。今日は父さんが仕事が休みの日だから、いつもより豪華な朝食だった。
「おはよう。樹は?目が覚めたらいなかったけど」
食卓に座り、もう一度あくびをする。
なんとなく体がだるく、熱っぽかった。
「樹なら今日、一家でおばあ様の家に遊びに行く予定だったみたい。樹ったらすっかり忘れていたみたいで、朝一で瑞樹から電話がかかってきて、慌てて帰って行ったよ」
父さんがくすりと笑う。
「そうなんだ」
俺も苦笑しながら、目の前のオレンジジュースを一口飲んだ。
「真は?今日も学校?」
「うん」
休もうかとも思ったが仲良くしている古典の教師に、資料の整理を手伝って欲しいと頼まれていたのを思い出した。
ふいに悪寒が襲い、俺は体をぶるりと震わせた。
風邪の引き始めだな。
今日はさっさと帰って来て寝よう。
サンドイッチにかぶりついている俺を父さんが満面の笑みを浮かべて見つめる。
「今日は合格祝いで大きなケーキ焼くから楽しみにしてろ」
「うん、ありがとう」
父さんの言葉に俺も微笑みを返した。
「じゃあ、ここにある資料、こっちのキャビネに並べて。頼んでおいて悪いんだが、これから職員会議でな。先生ちょっと外すから、あとよろしくな」
「分かりました」
「悪いな。昼飯は学食を奢るから」
先生は俺に小さく頭を下げると教科準備室から出て行ってしまった。
俺は目の前にうず高く積まれた本を見て、ため息をついた。
とりあえず50音順に並べるか。
「あれ、竹田先生は?」
声のした方を見ると、蔵元が古そうな本を片手に持ち、立っていた。
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