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第21話

「そうとも。大体あいつの暴力なんて一種のストレス発散みたいなものさ。あいつが一番腹をたてている相手は真を守れなかった自分自身だろうからね。アルファのくせに大切に思っているオメガのことも守れないなんて、全く親として情けないよ」 「貴一さん」  咎めるように瑞樹さんが名を呼ぶと、貴一さんは目を閉じて、両手の掌を上にむけた。 「まあ、あいつもすごく反省して落ちこんでるようだから、許してやってくれないか?」 「許すなんて。そんな……樹は何にも悪くないのに」  そう言うと貴一さんがくすりと笑った。 「真はいい子だな」  瑞樹さんに抱かれている俺の頭をくしゃりと撫でる。 「今日の昼間、蔵元の父親が俺の職場に怒鳴りこんできてね」  ヒュと俺は息を飲んだ。  俺を安心させるように貴一さんが微笑む。 「自分の息子に暴力を振るうなんて、一体どんな教育をしてるんだって。すごい剣幕で一方的にまくしたてるもんだから、まいったよ。まあ、城ケ崎唯人の一人息子とうちの息子は幼馴染なんだと話したら、すごすごと引き下がって行ったけどね」 「ごめんなさい。貴一さん、もとはと言えば俺が」 「真は何にも悪くない」  そう言って、瑞樹さんが俺の背中を撫でた。 「そうだよ。ただ、蔵元の親はろくでもない奴だな。あの親にしてこの子ありというか。甘やかし放題で育てられたんだろう。真、もし学校で嫌な目にあったらすぐに樹に相談するように」 「でもそれでまたあいつが蔵元を殴ったら」  貴一さんが首を振る。 「さすがに暴力はまずいとバカ息子なりに学んだようだから、もうそういうことにはならないだろう。とにかく頼ってやってくれ。あいつは真に頼られるのが一番嬉しいんだから」  庭の引き戸ががらりと開く。 「こんな寒空の下で何話してんだよ」  樹が顔をだした。 「もう戻るよ」  瑞樹さんが返事をする。 「真。困ったことがあったら何でも相談してくれ。同じオメガとして答えられることもあると思うから」 「瑞樹さん。ありがとう」  瑞樹さんは微笑むと俺の肩を抱いて、室内へと戻った。

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