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第38話

 高橋は俺が席に荷物を置くと、窓際の一番後ろの自分の席に俺を座らせた。  自分はその前の席の椅子を引いて座る。 「まだホームルームまでけっこう時間あるな。気まずいなら保健室で待つか?」  問われ首を振る。 「俺のことそんな話題になってるんだ」  俺は表情を暗くした。 「第一志望落ちて、自暴自棄になった奴らが面白おかしく騒いでるだけだよ。気にするな」 「うん」 「ねえ、城ケ崎」  顔を上げると、クラスメイトの女子数人が立って俺の周りを囲み、にやにやこちらを見ていた。 「お腹、大丈夫?悪阻とかあるんでしょ」  心配している感じは一ミリもしない問い方になんて返そうかと考えていると、高橋が声を上げた。 「なあ、お前さ。今度の生理の予定いつ?量多い方?」 「はあ?高橋、マジきもいんだけど。なんなの?」  女子の顔が真っ赤に染まる。 「今、お前が真に聞いたのは同じくらいプライベートでキモイ質問なんだよ。自覚ねえのかよ」 「私たちはただ心配しただけで……ねえ」  女の子たちは顔を見合わせると、すごすごと自席に戻って行った。もちろん去り際にこちらに中指をたてることも忘れない。 「ごめん。ありがと」  高橋は俺の言葉に首を振った。 「いや、俺も普通に腹が立ったし。それに成澤にもお前のこと頼まれてたからな」 「樹が?」 「うん。真に何かあったら、すぐ連絡欲しいって。真は意地っ張りだから、ギリギリまで我慢するだろうからだってさ」  高橋がふっと笑う。 「お前、本当に愛されてんのな。俺、成澤に頼み事されたの入学してから初めてだわ」 「樹、優しいから」  俺の言葉に高橋が首を傾げる。 「そうか?俺からしたら成澤って他人に無関心で冷たいイメージだけどな」 「実は優しいんだよ」 「まあ、お前には特別優しんだろうな。正直、蔵元のこと殴りつけてるあいつ、無表情で全く手加減してなくて、見てて恐ろしかったから、今回しゃべりかけられた時も、俺最初ビクッとしちゃった」

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