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第39話

 眉を下げた俺の表情を見た高橋が慌てる。 「いや、俺達オメガからしたらアルファって誰でも多かれ少なかれ怖いって思うとこあるからさ。ごめん、嫌なこと言った」 「蔵元との殴り合い、そんなに酷かったんだ」 「うん。殴り合いっていうか、ほぼ一方的に蔵元殴られてた。蔵元、鼻の骨折れたくらいだし。でもお前に起こったことを考えれば、蔵元はそれくらいされても同情の余地なしだと思うけど」 「でも俺もオメガとして自覚足りてなかったし」 「そうだとしても、蔵元のしたことはレイプじゃん。犯罪だろ。俺は許せない。あいつの取り巻きは、蔵元こそ被害者だなんて馬鹿なこと言ってる奴もいるけど」 「城ケ崎君」  またかと顔を上げると、緑の瞳と目があった。  染崎だった。 「ずっとあなたと話したいと思ってた。今日来なかったらあなたの家に直接伺うつもりだったのよ」  俺の目の前で染崎は大粒の涙を零し始めた。 「酷いじゃない。いくら蔵元君が好きだからって、フェロモンレイプしたあげく妊娠してその子を産むなんて。彼の苦悩を考えたことあるの?」  突然問われて、俺は頭が真っ白になった。  そう言えば俺と蔵元はあの事件のあとから一度も直接話していない。  唯パパが子供の事も含めて、蔵元の家と話しはついていると言っていたので安心していたが、蔵元自身は俺の決断に納得していなかったのかもしれない。  俺は無意識に腹部に手を当てた。  その動作を見た染崎の目が吊り上がる。 「ねえ、今からでも子供は諦められない?慰謝料ならたっぷりとお支払するし」 「染崎。いい加減にしろよ。真の家は金持ちなんだよ。慰謝料なんて必要ないんだ」 「じゃあ、どうすればお腹の子を産むのを止めてくれるのよっ」  染崎が叫ぶ。

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