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第52話

 樹はリビングをでると、一段抜かしで階段を駆け上がった。  寝室に着くと俺をそっとベッドに降ろす。 「樹。樹」  俺は樹のズボンに手をかけた。  頭がぐらぐらと煮えている。俺の人生で二度目のヒートは強烈だった。  樹は俺の手を払うと、ベッドに腰かけた。  俺は涙目で樹を見つめる。 「なんで?欲しいのに」  俺がまた樹に手を伸ばすと、樹がその手を掴んだ。 「真。聞いてくれ」  樹の顔は真っ赤で、息も荒かった。興奮しているはずなのに、俺と同じ様に求めてくれないのが悲しかった。  手が封じられた俺はせめてキスしてくれと唇を突きだす。 「真っ。真面目に聞け」  怒鳴られた俺は樹を睨みつけた。  そんな俺を樹が怖いくらい真剣な表情で見つめる。 「真。俺はお前のうなじを噛んでもいいのか?」  俺はくしゃりと顔を歪めた。 「お前以外の一体誰が俺のうなじを噛むっていうんだよ」  俺の言葉を聞いて、樹は泣きだしそうな表情で笑った。  樹がぶるぶる震える手で俺のシャツのボタンを外していく。 「ちくしょう」  樹が眉を寄せる。  俺は自らシャツの合わせに手をやると、思い切り左右に引っ張った。  シャツのボタンが弾け飛び、俺は呆然としている樹に噛みつくようなキスをした。  ベッドで仰向けになった樹の腹の上に跨がる。  樹の口内を貪ると、そのキスを樹が返し、俺の舌に噛みついた。  息苦しくなった俺が顔を上げると、樹が優しく頭を撫でてくれる。 「真。怖くないか?嫌じゃない?」  ズボン越しでも分かるほど樹の屹立は昂っているのに、樹はまだ俺のことを心配していた。  そういう樹の優しさはありがたいが、今は俺と同じ熱量で求めて欲しかった。  俺は首を振ると、樹をまっすぐに見つめた。 「お願い。もっと激しくして」  樹の喉仏が上下した。

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