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第58話
俺のヒートも落ち着いてようやく部屋から出られるようになった。
久々に唯希の顔を見た俺は、なんだか感動してしまい号泣して両親や樹に笑われるはめになった。
また子育ての日々に戻った俺は近所の公園に唯希を連れて行ったり、料理のレパートリーを増やそうと父さんに教えを乞うたりした。
公園に樹と一緒に唯希を連れていくと、二人ともに似ていない唯希は、俺達の子供とは思われなかった。
公園でママ友、パパ友ができると失礼な質問をぶつけられることもあったが、樹は誰に対しても穏やかに対応した。
「唯希は俺と真の祖父母に似てるんです。隔世遺伝ですね。確かに俺達は高校生で唯希を授かりましたが、早すぎたと後悔したりはしていませんよ。だってこんなに可愛い子に恵まれたんですから」
樹に微笑まれながらそう告げられたベータの奥さんはぽおっと頬を染めていた。
俺は大学に復学したいとは考えてはいたが、唯希の成長を見逃したくないという想いも捨てきれなくて、まだ専業主婦でいるというところに落ち着いた。
唯希が一歳になったある日。
自宅で洗濯物を畳んでいると樹から電話があった。
財布を忘れたというので、辺りを見回すと確かにリビングの机の上に置いてある。
「パパ?」
樹が大好きな唯希は遊んでいたおもちゃを放りだし、スマホに向かって叫んだ。
「パパ。好きー」
スピーカーフォンにしてやると樹が「パパも好きだよ」と返している声が聞こえた。
「財布がないと困るだろ?唯希と届けに行こうか」
「いいのか?悪いけど、そうしてくれると助かる。学生証がないと大学内の図書館に入れなくて困っていたんだ」
「うん、分かった。今から支度するから、12時には大学に着けると思う」
「ありがとう。最寄りの駅に着いたら連絡くれ」
「了解」
俺は電話を切ると、しゃがみこんで唯希に目線を合わせた。
「パパに会いに行こうか?」
「やったー」
唯希は立ち上がると、両掌を天井に向けた。
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