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第62話
真を抱いた樹が向こうからやって来る。
オムツを替えてもらえてすっきりしたのか、唯希はまた機嫌良さそうに笑っていた。
「お待たせ。真、行こうか」
俺は樹の言葉に頷くと、またみんなに頭を下げ、その場を後にした。
図書館に寄った後、樹は片手でベビーカーを押しながら、もう片方の腕で俺の腰を抱いて駅までの道を歩いた。
唯希は疲れたらしく、ベビーカーの中でぐっすりと眠っている。
「なあ、樹。お前、ゼミの飲み会とか全然出席してないんだって?月村さんから聞いた。たまには唯希のことは俺に任せてさ。大学生らしく遊んでこいよ」
俺の言葉を聞いて、樹はため息をついた。
「この議論、何度目だろうな」
樹は立ち止まると、俺と向き合った。
「いいか、真。俺はどうでもいい奴らと飲み歩くより、唯希を風呂に入れたり、真と唯希がじゃれ合っているのを見たりしている方が楽しいんだよ。だから変な気を回すな」
「本当にそれでいいの?」
俺の問いに樹は迷うことなく頷いた。
「それがいいんだよ」
「そっか」
微笑む俺の指先に樹が指を絡める。俺達はまたゆっくりと歩き始めた。
翌年、俺は大学に復学した。
とは言ってもやはり唯希のことが気になってしまい、授業も人間付き合いも最低限に留めた。
樹が大学を卒業し、唯パパの会社に入社すると、一気に俺の生活は慌ただしくなった。
今まで育児の半分を担っていてくれた樹は、仕事で遅くまで帰宅できなくなり、俺は父さんと唯パパ、樹の両親の力を借りながら子育てに奮闘した。
樹に遅れること二年。
俺も無事に大学を卒業した。
それから何年か経ち、唯希がもうすぐ小学校に上がる年齢で、俺達は実家近くのマンションに部屋を借りた。
親からの資金援助は一切なし。賃貸だったが日当たりの良い3LDkに俺も樹も満足していた。
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