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第64話

「そういえば俺達、海外旅行って行ったことなかったな」 「そうだな。旅行っていえば近場にキャンプしに唯希を連れて行ったくらいか」 「キャンプは虫が嫌だ二度と行かないって唯希の奴泣きべそかいてたしなあ」  俺はその時のことを思い出してくすりと笑った。  買い溜めしたゼリー飲料の点検をしていた樹が振り返る。 「真。別に焦って二人目作らなくたっていいんだぞ。もう少し三人家族を楽しんだって。そうしたら唯希が夏休みの期間中に、海外旅行に連れて行ったりもできるしさ」  ソファに座っていた俺は近くにあったクッションを抱きかかえた。 「樹こそ。本気で二人目嫌なら無理しなくていいよ」  樹は肩を竦めると、手に持っていたレトルトのおかゆを置いて、こちらに歩いてきた。  隣に座り、俺の肩を抱く。 「嫌なんて言ってないだろ。ただそういう選択肢もあるってだけだ」 「ん。ごめん。なんか俺一人唯希の言葉を真に受けて突っ走っちゃったかなって思って」 「そんなことないよ。俺だってもう一人家族が増えるのは楽しみだ」  樹が俺を抱きよせる。  間近で樹と見つめ合っているうちに、俺の吐く息が熱くなる。 「お前の香り強くなってきたな。頭の芯が痺れる香りだ」  首筋に噛みつかれ、俺の体から香りが滴るように溢れる。 「ああ」    樹は大きく息を吐くと、俺を抱きあげ寝室にむかった。  樹は普段からは考えられない態度で、扉を蹴り開ける。  唯希を実家に預けていて良かった。  そんなことを一瞬だけ考えた俺も、直ぐに樹と繋がることしか頭に浮かばなくなる。 目の前にある樹の耳朶に噛みつき、頬を舐めた。  樹が息をつめ、俺をベッドに降ろすとその上に圧し掛かる。 「はあ、はあっ。欲しいっ」  樹は俺の服を手早く脱がすと、自分も全裸になった。  胸の尖りに噛みつかれ、俺は首を反らせた。 「あああっ、いぃ」

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