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第71話
そんなある日、唯希が学校の友達を家に連れてきた。
冬を見せてあげるんだと言う。
小学二年生の男子達が額をつき合わせ、ベビーベッドの中を覗きこんでいる様子に俺は思わず笑みを漏らした。
友達を送ってくると家から出て行った唯希は、帰って来た時、どことなく表情が暗かった。
「おかえり。晩御飯、もうすぐできるよ」
「いらない。お腹空いていない」
「唯希っ?」
俺の呼びかけを無視して、唯希は部屋に閉じこもってしまった。
結局、その日唯希は夕飯を食べなかった。
そのまま部屋に閉じこもり、風呂も入らずに眠ってしまったようだ。
帰宅した樹にその話をすると、樹の眼差しがすぅと細められる。
「分かった。今度の休日、唯希と話してみるよ」
樹は小さくため息をついた。
それから唯希の態度はどんどんおかしくなっていった。
あんなに可愛がっていた冬に話しかけなくなり、俺が冬にミルクをあげているとこちらを睨みつけている時さえある。
どうしたんだと唯希に問いただしても、無言でそっぽをむくだけだった。
「反抗期かな」
唯希のそんな態度は初めてで、困惑した俺は樹に相談した。
樹も唯希のことを気にして話しかけてくれたようだが、唯希は舌打ちすると走っていってしまったらしい。
その話を聞いた俺は下唇を噛んだ。
「一度みっちり叱ろうかな。理由は分からないけど、そんな態度良くないって」
「理由も分からずに叱るのはまずいだろう」
樹がふうと息を吐いた。
「でも反抗期だったら理由なんてないんじゃない?」
「俺は理由があると思うけどね」
「えっ、理由って何?」
樹は俺をじっと見つめ、口を開いたが何も言わずに閉じた。
「いや、まだ推測の段階だから」
そう言うと樹は布団を被り、目を閉じた。
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