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第81話
「俺にとって君は疫病神以外の何者でもないよ。ねえ、一つくらい俺の役にたってくれたとしても罰は当たらないんじゃない?」
「何、言ってんだよ」
突然人格が変わったように蔵元が怒り始めたため、言い返さずにいたが、あまりに自分勝手な言葉に俺は黙ってはいられなかった。
「そりゃ染崎の体のことは大変だったろう思うよ。だけど産まれてきた子供がベータだってだけで、そんな言い方ないだろ。可愛い自分の子供じゃないか。大切に育ててやらなくちゃ」
俺の言葉の途中で、蔵元が吹き出す。
「城ケ崎って頭の中お花畑なんじゃない?ねえ、絶望ってしたことある?」
俺は蔵元を睨みつけた。
「あるよ。絶望したこと」
お前に犯された時に。
俺の言葉の意味を蔵元は理解したんだろう。それ以上言い返しもせずに、ふっと笑った。
「こんなとこまで来たのはね。城ケ崎と言い争うためなんかじゃないんだよ。借りを返してほしくてね」
「俺はお前に借りなんかないっ。お前の家の事業が上手くいっていないのだって俺には関係ないし。そもそもお前が」
「唯希だっけ。返してくれないかなあ」
俺は蔵元の言葉に、自分が何を言おうとしていたか忘れるくらい驚愕した。
「返すって」
「子供がベータだって分かってからアンナの様子がおかしくてね。自分の子供がアルファじゃないなんておかしいって。朝から晩までギャアギャアギャアギャア。うるさくて堪らないよ。離婚しようにも、アンナの父親に個人的な借金があってできないんだ。だからって、ベータの子供なんかにうちの家業を継がせるわけにはいかないし。両親と話し合って子供を返してもらうのが一番いいんじゃないかって結論に落ち着いたんだ。都合よく唯希はアルファだしね。アンナの両親も俺の両親も子供がこれ以上望めないならそれも仕方ないだろうって言ってくれているんだよ」
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