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エピローグ2

「真が決めたことだ」  成澤が素っ気なく言い放つ。 「ああ、知っている。だから城ケ崎にも礼を伝えて」 「嫌だね」  成澤の言葉に蔵元の目が見開かれる。 「お前からの伝言なんて一切真に伝えるものか。真がお前なんかのことで思い煩うと考えただけで吐き気がする」  蔵元は下唇を噛みしめた。  なんと言われようと、今、蔵元は反論できる立場にない。 「分かったよ。俺はとにかくお前たちに感謝と謝罪を伝えたかっただけだ」 「感謝と謝罪ねえ」  成澤が目をすぅと細める。 「蔵元、お前はつくづく馬鹿だな」 「なっ」  成澤の言葉に流石に蔵元も気色ばんだ。 「あのプライドの高い染崎が他人の子供を育てろと言われて、簡単に了承すると本気で考えたのか?こうなった責任のほとんどは俺はお前にあると思うがな」 「俺だって自分が考え無しだった部分は反省しているさ。アンナだっていつもならあんな突拍子のない行動にでたりなんかしない。ただ子供の事や事業の業績悪化が偶然にも重なって」  突然成澤がくすりと笑った。  蔵元は怪訝な表情でそんな成澤を見つめる。 「まさか業績の悪化までたまたま起こったなんて、考えていないよな?」 「成澤、貴様」  蔵元は奥歯を噛みしめると笑みを湛える成澤を睨みつけた。 「言っておくが、俺じゃないぜ。天下の城ケ崎唯人の息子を孕ませておいてなんのお咎めもないなんて、あり得るわけがないだろ?」 「だって、お前たち親子に近づかなければ、この件は不問に処すと」 「そんな簡単に許すわけがないだろ。あの人がさ。俺だってあの人くらいの力があれば、同じようにしていただろうしな」  蔵元は想像もしていなかったことを成澤に聞かされ、口をパクパクさせた。 「そんなに俺が憎いのか?俺だけが悪いのかよっ」  絞りだしたような声で蔵元が問う。 「いや、ある意味俺はお前に感謝しているんだぜ」  成澤の言葉に意表を突かれた蔵元が顔を上げる。

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