24 / 108
第6話 過負荷(2)(*)
そっとシャツの裾をテラの指が持ち上げた。
「ちょっ……」
刹那、衣擦れの音とともに、テラの指先がシャツの中に潜った。
「ぁ……!」
脇腹を下から上に撫でられ、腕の付け根まできた指先が、鎖骨を通って、ハナの肋の浮き出た心臓の上を滑った。
「ま、待っ……」
「どうかしたか?」
唇を噛んで、正気に戻るよう、大きく呼吸を繰り返すハナに、テラは耳朶にそっと声を吹き込むようにして尋ねた。
「これ、脱ぎ、ます……」
言うなり、掴んでいたシャツの裾をめくり、脱ぎ捨てた。肌が空気に触れ、汗ばんだところがじわりと冷えはじめる。同時に、新たな熱が生まれ、楽になったと思った呼吸が、再び乱れはじめる。
「覚えのいい子は嫌いじゃない」
「今年、成人します。子ども扱い、しないで、ください……っ」
不機嫌に返せば、テラの冷たい手が、肌を無為に滑った。
「んぅ……っ」
「成人前なら、まだ子どもだ」
じくじくとかさぶたが膿むように、ハナの中心は刺激を欲しがった。ハナの肌を指先で味わっていたテラの指は、やがて、これまで掠めるだけだった両の乳首に止まった。
「ん、なとこ、感じな……っ」
ぎゅ、と押しつぶされた乳首に、頬が火照る。男のそれは、ただの意味のない突起に過ぎないと思っていたのに、やがてくにくにと弄られたり、乳輪をそろりと撫でられ、しつこいぐらいに繰り返される刺激に、敏感になってゆく。
「んぅ、そ、れ、ゃ……っ」
快楽で朦朧としはじめたハナに、テラが耳元で囁く。
「やめるか?」
「っ……」
「どうする? きみが逃げ出しても、全く問題はないが」
ないが──。
逃げたらこれで終わりだと、言外に仄めかされる。
「ゃ、め、ない、で……っ」
悔しげに唇を噛むと、テラは満足げに口角を上げた。
「……そうこなくては」
ぐらぐらと揺らぐ理性にしがみつき、ハナが反応を返すのを、まるでテラは楽しんでいるようだった。経験と知恵があれば、これしきの快楽など、見ぬふりができるのかもしれない。だが、ハナは、悔しさに涙を溜めることしかできなかった。
「っぁ……!」
瞬間、ぐり、と乳頭を潰され、声が出てしまう。
「膝を、開いて」
言われるまでもなく、両脚が自然と開いてゆく。
熱い。
悦い。
イきたいと感じるほど、ひとりで昂ぶっている。
(好きじゃ、ない、のに……っ)
「ぁ、ぁっ……」
(どうしよう、気持ちいい)
嫌なのに、どうして──。
スラックスの前がきつい。
腹の中がじわりと潤む。
テラの愛撫に、匂いに、こんなに反応してしまうなんて。
ともだちにシェアしよう!