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第12話 脅迫状(2)
「クリスマスライヴまでの二週間は、どうするつもりなんですか?」
問うと、明はテラと目を合わせ、それから言った。
「脅迫犯は、クリスマスライヴを指定してきている。その前に行われるライヴについては様子見だ。もちろん、身に危険を感じるようなことがあれば、ハナを下げることに躊躇はない。というか、俺としては、今すぐステージに立つのを止めさせたい。身内としては」
「もっともな意見だね」
ミキが頷いた。
「でもそれって、脅迫に屈したって、犯人に誤ったメッセージを送ることにならない?」
「そうだよ。コケにされて黙っていられるかって問題でもあるしね」
「ネネ、問題はハナの安全にかかわることなんだよ。喧嘩したらダメ」
「まあでも、あたしらも、ハナと演りたいってのが本音なんだけどね」
ミキに続き、ネネとオトハとルナが言った。ルナは、ハナが「フィオーレ」として踊っている間、舞台袖で、ずっとハナを含むメンバーたちのステージを見てきていた。
「問題はメンツだけじゃない。ハナに何かあってからじゃ、遅い」
オトハが保守的な意見を述べた。
「ハナに手を出すなら、あたしが守る」
ルナが腹に据えかねた様子で、唸るように主張した。
その後、様々な意見が出たが、結局はハナとプロデューサー陣の決断に委ねられることになった。
「脅迫状のことは、公にしないの?」
リーダーのミキが、肝心のところに触れた。
「今のところ、予定はない。ファンの抑止力に頼るのは、最後の段階にしたい」
「脅迫犯が複数の可能性が消えないと、かえって混乱を招く事態になりかねないからな」
明とテラが言うと、みんな考え込んでしまった。
「あの……」
ハナが思い切って手を挙げると、アルファたちが一斉に振り向いた。
「ぼく、出ます。出させてください」
ハナが言うと、明が身体の前面で組んでいた手を解いた。
「本気か? ハナ。今、決めなくとも、いいんだぞ?」
「でも、兄さん。ぼくは男だし、何をされても大丈夫だから。それに、脅迫犯に屈するのは悔しいし、ルナとステージに立てる最後のチャンスだから、立ちたい。それに、ぼくという標的を置くことで、犯人の注意が逸れて、「フィオーレ」の四人はかえって安全になるかもしれない。それなら、いい気がするんだ」
「何がいいものか、お前を盾に使うなんて……!」
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