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第13話 誕生日(1)

 十二月二十四日のクリスマスライヴは、思ったほど揉めずに済んだ。  物が飛んでくるようなハプニングもなく、一曲目からいきなり新曲を披露するのも初めての演出だった。スポットライトの中、「五人」になった「フィオーレ」の踊る異様な熱気に、ファンの多くは目の前で起きていることに、しばらく理解がついていかなかったようだった。  艶かしい、まるで性的なことを仄めかすようなハナとの絡みを入れた激しいダンスナンバーのあとで、ハナが捌けると、四人組に戻った「フィオーレ」が、次々と初リリースしたアルバムに入っている曲を歌い上げていく。アルバムCDの発売以降、ルナのパフォーマンスは初めてだったので、ファンも大いに盛り上がり、ライヴは大成功に終わった。  終わってみると、最初の曲が凄いと話題になり、物販で並ぶファンの一部に、ハナのグッズやチェキ列はないのかと尋ねられるなど、スタッフらが少し慌てたハプニングはあったものの、ルナとミキが「ハナは元々、バックアップメンバーなので」と対応すると、興奮気味だったファンたちも、沈静化したようだった。  ハナはずっとバックヤードにいて、そわそわしながら見守っていたが、やがてチェキお渡し会がお開きになると、やっと安心することができた。 *  ステージが無事に済んだあと、「フィオーレ」たちに混ぜてもらい、ハナは初めて、スペイン風バルの一角を貸し切った、ノンアルコールの打ち上げという名の食事会に参加した。 「ってかハナって紳士だよねぇ」  乾杯のあとで、いきなりそういう話になった。プロデューサーの明とテラも、車できているのでノンアルだったが、クリスマスライヴが成功したテンションにあてられて、いつになく楽しそうだった。 「そういえば、あたしらハナのこと、男として見てないね」 「わかる! 草食系ってやつ?」 「でも最近、色っぽくなったと思わん?」 「思わん? って……、どこの訛りよ?」 「さあ……」  振られた話題にどう対応したものか、「フィオーレ」たちに玩具にされるハナだった。成人まで秒読みのハナも、当然ノンアルコールだ。 「ちょっと、トイレいってくる!」  猫がじゃれ合うみたいに玩具にしていたハナをぽいっと放り出し、ネネが宣言して席を立つと、「あっ、あたしも」「あたしもー」と次々に主賓の「フィオーレ」たちが消えてしまった。結果、ハナと引率兼保護者役の明とテラだけになってしまったテーブルに、オーダーされた品が、どっと届きはじめる。

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