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第14話 その日(10)(*)
「ぁ──……っ、ゃ、──……っ」
瞬間、声もなくハナは粗相していた。
発情のあまりの激しさに、意図しないまま、シートを濡らしてゆく生暖かい液体。
「ゃ、ゃだ……っ、とま、止ま……ぅ、ゃぁぁ──……っ」
膝を閉じようとするが、うまくいかない。
止めようと努力しても、うまくいかない。
一度はじまった放出は、腿や臀部を濡らし、みるみる助手席のシートに吸い込まれてゆく。なのに、気持ちよかった。快楽の波が最初の山を越えたような、達成感に似た疼きが、さらなる波を呼び込もうとする。止まれと念じるのに、身体中の筋肉が馬鹿になったみたいに弛緩し、悦んでいる。じわりと感じる性器の痛みとともに、下肢を濡らす液体が広がり、吸い込まれていくことに、ハナは死んでしまいそうな羞恥を感じた。
「ご、め、なさ……っ」
「このまま、ここに居てくれ……!」
テラは、べそをかいているハナの髪に一瞬だけ触れ、するりと梳くと、そのまま蹴るように運転席から出て、玄関へと走って行った。
遠ざかるテラの足音を聞きながら、ハナは静かに目を閉じた。
テラの残り香にすん、と鼻を鳴らすと、もう何も考えられなくなる──。
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