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第17話 誕生日プレゼント(3)

 正直なところ、テラと食事ができることそのものが、ハナにとっては最高のプレゼントだった。ただ、それを口に出していいのか判断がつかない。騙し討ちのように同席するテラの、心の内がわからないからだった。 (でも、誓約書の話が本当なら……)  わずかな期待に、浮かれそうになるのを、ハナは押しとどめた。 (いや、兄さんへの、罪滅ぼしのためにきてくれているのかもしれないし……) 「いいんだ。明から連絡をもらった時、こういうことになるかもしれない、とは思っていた」 「テラ……」 「今日は二つほど、きみに頼みごとがあってきたんだ」 「頼みごと、ですか?」 「どちらもきみにしか頼めないことだ。本当は、明を通して話をするつもりだったんだが、あの気難し屋は、いくら連絡しても、梨の礫で困っていたところだった」 「兄さんが?」  要するに、明がテラからハナへの連絡を、途中で握りつぶしていたらしかった。  一方で、ハナの連絡先を知っているにもかかわらず、あえて明経由で頼んできた理由とは、何なのだろう、と不思議に思った。 「きみは今も「フィオーレ」のバックアップをしているだろう。だからわたしの仕事……彼女たちの衣裳合わせと採寸会の時に、アシスタントとして働いてみないか、打診していたんだ」 「ぼくに、できるでしょうか?」 「わからないことは教える。もし引き受けてくれるなら、君から明に言っておいてくれないか。もちろん、給金は弾むし、アルバイトではあるが、ちゃんとした雇用契約を結ぶ。期間は……そうだな、明日から通年、と言いたいところだが、来週あたりから、まずはひと月、やってみて結論を出そう。もし引き受けてくれるなら、詳しい日程はメールする。体力仕事になるだろうから、そこは覚悟しておいてくれ」  確か「フィオーレ」の試着兼採寸会は、月に一回、行われるはずだった。ハナにしかできない、という殺し文句の意味が不明だったが、せっかくテラが手を差し伸べ、勧めてくれたことだ。やってみたいと思った。 「わかりました。やらせてください。兄にはぼくから言っておきます」 「よかった」  テラがホッとしたのが伝わってきて、少しくすぐったい気持ちになった。  明は難しい顔をするかもしれないが、もう大人になったのだから、自分で判断してもいい、とハナは思った。今は学業と「フィオーレ」のサポートで忙しいが、月に一度ぐらいなら、テラを手伝う余裕もあるだろう。何より、テラと一緒にいられる時間がある、思うと嬉しくなった。

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