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第17話 誕生日プレゼント(6)

「わたしにとって、きみに触れるのは祈りに似た行為だ」 「……っ、すみません。失礼なことを」 「いや。きみの前で、こうして本音を語るのは、なかなか興味深い体験だ」 「兄に、何か言われませんでしたか? その、責任的なこととか」 「言われたが、それはそれ、これはこれだ。ハナ。わたしはきみのことが単純に、好きなんだと思う。他人のために、純潔を投げ出そうと、本気で思えるその心が好きだ。きみのまっすぐな意志が好きだ。器用に四人の「フィオーレ」たちの癖を再現する、仕事に対する誠実な姿勢が好きだ。わたしの膝で……色付く蕾になるきみが愛しいと、いつからか素直に思うようになっていた。だからだ」 「テラ……」 「きみのことを、こんなに愛しく思う日がくるとは、想像だにしなかった。今思えば、きみの、あの時の決断に感謝している。きみという、わたしの運命に出逢えた。こんな風に考えるなんて、初めてのことなんだ」 「……」  甘い言葉に蕩かされて、世界がくるくる回りはじめて、ふわっとなってしまった。 「ハナ……? 大丈夫か?」 「は、い……」 「どこか様子が変だが、酔ったのか?」 「はい……」  酔っていた。  テラのくれる、心と言葉に。 「……美味しい料理も食べたことだし、そろそろ出ようか。歩けるかな?」 「あ」  椅子から立ち上がって、ふわっとなった分、左右によろけた。 「大丈夫か? ……きみ、すまないが車を呼んでもらえるだろうか?」  テラが咄嗟に腕でハナの身体を支え、駆けつけた店の者に向かって指示を出した。  そのままテラの腕に捕まりながら、店の入り口付近にある休憩スペースで休んでいると、支えるためにハナの肩を抱くテラの腕が、そっと一房、落ちかかったハナの髪を梳いた。 「テラ……?」 「ん?」 「髪を……」 「ああ、すまない。つい癖で。きみの髪が、触り心地がいいもので」 「あの……」 「……ん?」  もっと触ってくださっても、いいです。  そう言いかけて、はたとハナは気づいた。  明との約束があるから、自分から要求してはいけない決まりになっていたことを思い出した。ハナも、お返しにテラに触りたかったが、それはルール違反にならないだろうか。 (触りたい。でも……)  明との約束を反故にせず、テラに触るには、どうしたらいいのだろう、とハナは密かに煩悶した。 「何でも、ないです……」  俯いたハナに、テラは訝しげな視線を投げたが、やがて車がくると、後部座席に並んで乗った。 「あの、テラ……?」 「どうした?」 「あ……ええと」  運転手は無口な男で、車内では、時々低くかすかに無線の音がザザッと流れるだけだった。

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