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第18話 試着兼採寸会(1)

 スタジオ「ピアンタ」のダンスルームでは、月に一度の試着兼採寸会が開かれていた。  テラが新しい衣装のコンセプトを説明したあとで、衝立によって仕切られた仮のフィッティングルームで、「フィオーレ」たちが順繰りに、仮縫いされたばかりの衣装に袖を通してゆく。 「それと、体重が増えた者は再測定するから、申し出るように」  テラが念を押すと、「フィオーレ」の四人から盛大な八つ当たりに近いブーイングを食らった。 「うわー、セクハラ! 感じ悪ぅーい!」 「増えてないったらない! 気合いで大丈……っ」 「ネネ、きみは要採寸だ。こちらへ」  ハナは「フィオーレ」の新衣装を、番号順に彼女たちに渡していく手伝いをしながら、四人分のフィッティング後の衣装を、テラから貰い受けた順番に、番号札を掛け、ハンガーラックに戻していくという作業をしていた。 「仕付糸の予備をくれ、ハナ」 「あっ、はい! あれっ?」 「まだか? 超特急でくれ」 「すみません、確かこっちに……、ありました……!」  テラは仕事のこととなると暴君に近い地が出たが、かえってそのぶっきらぼうな感じが、最初の頃を思い出して、嬉しくなってしまうハナだった。 「ハナ、背中何とかなる?」  ミキが背を向けてねだった。 「針、取りますね。はい、どうぞ」 「ありがと」 「ハナ? ブーツが方用ないんだけど。ヒール新しくしてくれって言ったやつ」  オトハが片方のブーツを持ちながら、言う。 「それならたぶん、こっちの鞄です。テラ、シューケースの鍵、貸してください」 「ん」  ひゅっ、と放物線を描いて、車のキーやら何やらが全部束になっている鍵束を投げられ、受け取る。マンボウのキーホルダーが付いているのを見て、ふわっとテンションが上がるのを、仕事中だからと戒めて、シューケースの鍵を開けた。 「あった。えっと……十二番、の、左。これですかね?」 「あっ、そうそれっ」  言いながら、フィッティングを終えたオトハがブーツを履こうと踏ん張っている。  試着兼採寸会は、参加してみて初めてわかったが、「フィオーレ」たちが下着姿で次々に衣装を着替えては、テラのチェックを待つ行列ができるものだった。チェックが終わった順から、衣装を脱ぎ、私服に着替え、ある者はシャワーを浴びに、ある者は修理されたヒールの感触を確かめ、めいめいが大騒ぎで自由にやっている。  四人分と数が多い上に、サイズの直しも入るので、一人で全部をこなすのは大変だと、テラが零すのも頷けた。

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