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第18話 試着兼採寸会(3)
「きみはもう大人だ。……キスをしても?」
ハナが動けないのをいいことに、突然、そう振られた。
「えっ? だ、だめです。運転中じゃないですか」
「今は停まっている」
「一時停止でしょう。だめです。車の中では特に」
赤面してやっとのことでそう言うと、テラは溜め息をついて諦めたようだった。
「つまらん」
こうして仕事の合間に際どい冗談を交えられるのは、緊張もするが、同時に楽しかった。
「試用期間だが、きみは合格だ。あれだけ彼女たちが頼れるアシスタントも、貴重だな」
「良かった……。男としては、ちょっと複雑ですけど」
「男性オメガは女性アルファには反応しないからな。うってつけだと思ったが、あそこまで嵌まるとは思わなかった。彼女たちも安心しただろう。いい傾向だ。きみは、わたしだけに反応していれば、それでいい」
「っ」
食事を共にした夜以降、テラはよく、こうして冗談か本気かわからないことを言うようになった。ハナに対して、どこかに触れる時、必ず許可を取り付けようとするのは助かるが、最初に額にキスを許してしまってから、キスぐらいはどうということのない事柄だと思っているのか、隙をついては、ハナに押し問答を仕掛けてくる。「はい」と答えたが最後、なかなか解放させてもらえないのが、贅沢なこととはいえ、今現在の悩みだった。
この前、軽くOKしたら、口の中までさらわれて、舌の根まで激しく吸われて、腰が立たなくなってしまった事例があるだけに、油断ならないのだ。
そうして解放される頃には、身体が熱く反応して、非常に困ることになるのだった。
テラも、それはわかっているはずなのに、どうしてかハナに触れたがる。
ハナが、嬉しくも抵抗せざるを得ない状況をつくっていた。
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