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第20話 恋というのは(5)
テラに、触りたい。抱きしめたい。テラにも、同じように気持ちよくなってもらいたい。
突発発情が起これば、簡単にそれがかなうことはわかっていたが、それを望むことは、テラの自制心をないがしろにすることと同義だった。それに、抑制剤の処方を変えたばかりの今、そう簡単に突発発情が起こるはずもない。
「ここから先は、またの機会に」
好きで、好きすぎて、身体が昂ぶるのを止められないのが恥ずかしい。
「つ、ぎ……?」
快楽にぼやけた声でねだっているように聞こえたかもしれない。テラが優しく言った。
「次だ。もう夜も遅い。そろそろ送り届けよう」
次があることに、ホッと胸を撫で下ろすと、テラが苦笑して、ハナを促した。
テラの仕草や、表情や、行動の端々から、どれほどハナを大事に想ってくれているか、伝わってくる。大切だと思うからこそ、なかなか進もうとしないのだと、理解はしていた。
でも、好きだと、自分からは言えない。
欲しいと、自分からはねだれない。
そんな約束が二人を隔てているのが歯がゆかった。
恋というのは、難しい──。
ハナはひとり、密かに煩悶していた。
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