95 / 108

第21話 出立(8)(*)

 それを受け止めるたび、くすぐったくて、ハナは笑った。愛している、と言うために唇をほどくと、すかさず舌が入ってくる。優しく唇を甘噛みされたあとは、頭の中をかき回すように口内をさらわれた。くらくらして、テラに支えられていると、やっと「ベッドへいこう」と囁かれた。  何度もこの部屋で、テラに快楽を教え込まれた。テラの寝室に足を踏み入れると、どこか不思議な感じがした。 「……どうかしたか? ハナ」  テラが、ハナの衣類を脱がせながら、肌に所有の印を付けつつ、尋ねた。 「ここ、で、あなたと最初に、逢った日のことを、思い出して」 「懐かしいな」 「はい……っぁ、んっ」  カーテンの引かれた窓は淡く発光し、幾度となくかいだテラの薔薇の香りが、部屋中に満ちている。下着一枚にされてしまうと、ハナはベッドへ組み敷かれた。テラはジャケットとタイを取った状態で、まだシャツの第二ボタンまでしか外していない。その隙間から、白い鎖骨が覗いているのが見えて、ハナは一気に鼓動が速まった。  こんなにキスばかりしたことがなかったから、舌が蕩けるのではないかと思ってしまう。くちづけを繰り返し、口内を蹂躙する舌は、容赦なくハナを煽り、息ができなくなる。いつの間にか、足の間にテラの身体が割り込んで、閉じられなくなってしまっていた。その状態のまま、テラがスラックスの前をハナの太腿に押し付けてきて、ビクッと身体が反応してしまう。 「参った。きみをどこから食べるべきか、わたしとしたことが、決めていない」 「どこ、でも、っ、好きに……っ」  ハナは言いながら、太腿に触れた熱の硬さに、驚いて、胸がいっぱいになった。  テラが、欲情してくれている。  泣きそうなほど、嬉しかった。  テラの背中に腕を回すと、逞しい筋肉質の広い背中の上の方に、肩甲骨の出っ張りがあるのがわかった。 「きみの、好きなところから、食べてもいいだろうか?」  言って、乳首を捏ねられる。感じるように仕込まれたせいもあるが、弄られると、普段以上に敏感になり、ビクビクと身体が跳ねた。 「ここが、好き?」 「っ、ぁ……っ、ん、す、き……」  声を我慢するハナが認めて根を上げるまで、愛撫を止めてくれない。指先で押し潰され、つままれたそこに、テラがくちづけを落とすと、えもいわれぬ悦楽が湧いた。身体の芯がじんじんと熱を持って疼いている。無意識のうちに腰を揺らめかせるハナに、テラは満足げな笑みをみせた。 「ここからは、わたしの楽しみの時間だ」  しかし、ハナを見下ろし、テラが呟いた刹那。  暗い部屋の中に、無機質な電子音が響き渡った。

ともだちにシェアしよう!