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第21話 出立(15)(*)

「きみが、わたしを求める目も、こうしてわたしを受け入れる腕も、可愛くおねだりするところも、全部──……全部好きだ」 「ぼく、もです、テラ……」 「わたしがいない間、寂しくないといいのだが」 「それは……ぁっ」  寂しい。  きっとこの気持ちを変えることはできないだろう。  同時に、体内に撒かれたテラの白濁が、ハナの抽挿されて赤く腫れた後蕾から、わずかに垂れるのがわかった。テラを求める夜が長ければ長いほど、ハナは不在を嘆くことになりそうだ。だが、帰ってくるとの約束があれば、大丈夫な気がしてもいた。 「きみをロンドンに連れて行きたい」  しばし黙ったあとで、テラがぽつりと呟いた。 「パスポートを、持ってませんし」 「残念だな。だが、挨拶なしで連れて行ったら、今度こそ明に殺されそうだ」  盛大に溜め息をつかれ、ハナは、明の慌てぶりを想像して、ちょっと笑ってしまった。 「ぼくも、離れるのは嫌です。でも、我慢しますから」 「そうだな」 「あなたが帰ってくるのを、待ちます」 「ああ」 「それと、言い忘れてたんですが」 「?」 「あなたを愛しています、テラ」  離れがたい現実を、共有できるのが、幸せだった。ハナは、つい数時間まで知らなかった、小さな胸の痛みを、愛しく思い、ぎゅ、と拳を握った。身体を動かすと、全身が怠いけれど、どこにも異常がないのは、テラが丁寧に抱いてくれたせいだとハナは思った。その気遣いが嬉しいし、愛情を受けているのだと、実感できる。つい数時間前までは、知らなかった感覚だった。 「……帰ったら、明やご両親と、話がしたい。さっさと父に挨拶を済ませて、超特急ですべきことを片付けて、なるべく早く戻る。向こうにいる間は、電話するよ」 「はい、テラ。待ってます。気をつけていってらっしゃい」  それからシャワーを浴び、二人とも身支度を整えると、いつしか夜の七時になってしまった。テラは、ハナとルームサービスで軽食を摂ると、荷物を携えハイヤーに乗り、ロンドンへと旅立っていった。

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