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はじまりの雨2

 雨は、タクシーの窓を激しく打ち付ける。  僕らは、車中、店にいた時にしていた会話の続きをしたり、他愛ない会話をしていた。  談笑しながらも僕は、彼が自分の体を僕の体に寄せてくる事が気になってしかたなかった。  腿と腿が触れあい、肩と肩が触れあう。しまいには、ひとの太腿まで撫でてくるもんだから、僕は、『このセクハラおやじ!』と、言っては彼から離れようとしたけど、結果は、失敗におわったけどね。  「これ、被って降りろ。」 タクシーが、僕が住んでいるマンションの前に着くと、彼がジャケットを脱ぎ、僕に差し出した。 「そんなことしたら、雄一さんが、濡れちゃうんじゃ……。」 「いいから早くいけ!!」 「うわぁ!?ちょっと……。」 ガバッっと背後から頭にジャケットをかぶせられ背中を押された。僕は、押された勢いのままに走ってマンションのエントランスへと行った。  僕が入って、少ししてから、彼がエントランスにやってきた。 僕は、ジャケットを被ってたのであまり濡れなかったけど、彼は、綺麗にセットした髪が乱れ、シャツが濡れていた。 「ジャケットありがとうございました!」 僕が、ジャケットを手にかけ、軽く頭を下げた。 「そんなかしこまるなよ。」 僕の頭をやさしく撫で、彼がフッと口元をゆがめ笑った。  どきっ。  これで三回目だ。 鼓動が早くなる。頭がボーッとする。酔いはさめたと思ってたのに……。  まだアルコールが残ってるのかなあ。 「どうしたんだ? 顔赤いぞ」 「そ、そうですか? 多分まだアルコールが残ってるからですよ。それよりも部屋行って、早くシャツと髪乾かさないと風邪ひいちゃいますよ。」 「……だな」 僕の目を見て、二ヤリとした笑いを浮かべた。僕は、怪訝な顔でそんな彼を見る。 「なに考えてるんですか?」 「いやさ。睦月が『早くシャツ脱げ』言うからさ。誘われてるのかと思って……。」 「脱げなんて言ってません! 乾かさないとって言っただけです。」 「乾かすためには脱がないといけないだろ?」 「そりゃ、そうですけど……それに僕は男になんて興味ありません!! もうセクハラばっかしてると置いてきますよ!! 髪の毛ハゲても知りませんよ!!」 「待てよ。ハゲは最近気にしてるんだよ。置いてくなって。」 僕は、彼に背を向けると足早に部屋へと向かった。彼の足音が、僕の後についていく。  「そこ座って、待っててください」 僕が、ソファを指差した。彼は、興味深そうに僕の部屋を見渡している。 「え〜!ひとりにするのかよぉ」 「わがままいわないでください!」  「…ぷっ」 彼が、口を抑え、僕の顔を見るなりふきだした。僕は、何がなんだか分からず、不機嫌な面持ちで彼の顔を見た。 「なにがおかしいんですか?」 「睦月に怒られてばっかだなと思ってさ。」 「そうですかあ?」 「そうだよ」  口元をゆがめ、彼が笑った。  『お前のことなら何でもわかる』そういいたげな笑顔に僕は、引き込まれていく。    何度目だっけ?  なんでなんだろう……?  彼が僕の目を見て、微笑むたびに鼓動が早くなるのは……。  コレじゃ、まるで僕が彼に恋してるみたいじゃん。  ブンブン。僕は、かぶりを振った。  「どうしたんだ? 急に頭なんか振って。」 彼が、不思議そうな顔をして僕に尋ねた。 「なんでもないです! 早くとりにいってきますね。あ、冷蔵庫のモノ勝手に飲んじゃってていいんで。」 僕は、それだけを一気にまくし立てると、逃げる様に寝室へといった。  寝室に入ると、ドアに凭れたままその場にへたりこんだ。  頬が熱い。  心臓が、バクバクする。  たしか彼と初めて会った時もこんなふうにどきどきしてたっけ。その時は、もともと彼が憧れの人だったからって理由だったけどさ。  でも、今じゃ彼の長所も短所も知ってるわけだから、その上でどきどきしてるってことは……。  認めたくはないけど、憧れとはあきらかに違うものだ。  「好き」なんだよね。きっと…  でも、何で今日になって気きづいちゃったんだよぉ!    僕のばかぁ!!    突然降ってきた感情に僕は、心の中で叫んだ。

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