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第14話依吹side
俺には物心ついた時から一緒にいる幼馴染みがいる。
そいつが高梨家の御曹司である康太なんだが、こいつはやばい。もう本当にいろんな意味でやばい。
どんなところがってまず、世界がまるで自分中心で回っているかのように人を振り回すだろ。
さっきの電話切る時がそれだろ。この前だってすぐに電話出ないからって一日中グチグチと文句言われ続けてあれが怖くて通知はいつだってONのままにして2コールで出られるようにしている。
それから、おぼっちゃまおぼっちゃまで育てられているからなのかまるで心がない。“ありがとう”?なにそれオイシイノ?とはまさにこのことだと何回思ったことか。
次に容姿端麗、頭脳明晰、スポーツだってそつなくこなしてしまう。おまけに御曹司であるが故に金だって名声だって思いのままだ。
まあ俺ん家だって名家って言われればそーだけどぉ?
康太ん家はレベルが違う。
まあ、そんな康太おぼっちゃまにも弱点というか短所がある。
俺らがまだガキんときから俺が思ってたことなんだけど、あいつは無類の天然である。
というか一般常識が人よりも劣っている。
人が当たり前だよね、ということを彼は出来ないし知らないのである。
俺だってどうして幼馴染みが食事のマナーが素晴らしいのに対して知っとかないと恥をかくようなことを知らないのか知りたい。
まあこんなにスペックが高いあいつだから告白のひとつやふたつあるわけで、そんな時にあいつが『何かよくわからんが手紙が下駄箱に入っていた。ポストか何かと勘違いしたようだ。こんなバカがこの学校にいるとはな。転校したい。』
バカはお前だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!
という言葉を急いで飲み込んで『…そっか。それどうすんの?』
と冷静に言えた俺を誰か褒めて欲しい。
何でもかんでも真面目にやってたらこうなっちゃうんだな、って思った。
こんな面白いやつ世間が放っておくわけないだろ?
だからクラスで浮いたことはないし、それどころかすげー人気者だった。
で、俺はこんなだからあいつはいつか離れていくだろうと思っていたけど一向に離れていく気配はないしそれどころか今思えば、生まれた病院から今通っている大学まで片時も離れたことはなかった。しかも大学決めるときなんかは『お前が行く大学に行く。』と言ってきた始末だ。
そんなんだから康太に『いつもはひとりでいたいとか言うけどほんとはやっぱかまって欲しいんだろ〜?』
って聞いたことがあるんだけど、
『いや、1人でいたいのは本当だ。話すことが苦手だからな。かまってほしくもない。でも(ぐふっ……
『おい、大丈夫か。死ぬのか?』
『だ、大丈夫。んで?』
『そうか。で、でもお前に話しかけるとどんな時でもちゃんと聞いてくれるし、なんでも知ってるからな。頼りにはしている。』
ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!もう可愛いな!!
って思った。
あれから俺はあいつに嫌がられたりするけど自分から離れようとはしなかった。
…いや、できなかった。したくもなくなった。
それくらいあいつにハマってた。
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