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第16話七彩side
今日は朝から秋葉原でロケがある。
元々人気だった小説がアニメ化されて大きな反響を生んだみたい。
ちなみに俺が主演だから。
ちょっとは俺のおかげでもあるでしょ。
でも、一ノ瀬さんから朝から起きるのが遅いだの準備が遅いだの怒鳴られて朝から気が乗らないよ。
「ったくよー、しっかりしてくれよ!それでも旬の声優か?!気張れよ!」
「俺声優だよ?なのにロケってなに?」
「話聞いてんのか!?今やってるアニメあるだろ、それの宣伝!もう声優は絵に息を吹き込むだけが仕事じゃねーんだ。わかったか?しっかりやれよ?」
「うんわかった!」
「俺知ってんだよな、お前がいい返事するときは大体聞いてねぇときだ。…はぁ、大丈夫か?」
「着いたぞ。共演する人に挨拶行けよー。」
「わかってまーす。」
「今日はよろしくお願いします!時枝七彩です!」
「おう!君がなーちゃんかぁ!こちらこそよろしゅうな!」
おー、すごい。関西弁だ。司会の人か。やっぱ元気だなー。次だ。
「今日はよろしくお願いします!時枝七彩です!」
「あ、なーちゃん!!え、あのアニメの主役の声優ですよね!えー!噂に聞いてたよりもイケメン!!どーしよ!」
どうしようと思ってないなー。タレントさんも大変だなー。ほっとこ。
「ただいま。挨拶で疲れた。ロケ無理そう。」
「嘘つくな、今から歩くぞ。」
「今日はスペシャルなゲストさんが来てるらしいで?」
「そうなんです!早速呼んでみましょう!なーちゃん!」
「はーい、◯×アニメの主演役の時枝七彩です!よろしくお願いしまーす!」
人気が出て欲しかった。有名になりたかった。ツイッチャーのランキングにも入りたかった。
そのためにどんな稽古からも逃げなかったし目を反らさなかった。
そう。これでいいじゃん。
俺が目指してたのはこれじゃん。なのに…
なのに…
なに?この気持ち。泣きそう。ここから逃げ出したい。
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