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お正月特別編「消えるもの、雨が降る。」

※【少々 R18を含みます。】(内容は、本編と関わりのない蛍と桜のお話です。) △ 一月一日。午後13時25分。海野宅にて。 「あけまして、おめでとうー、さくらちゃん。」 「.......おめでとう、ございます。」 「....どうしたの?」 そう言う蛍は、俺の身体をその長い両足で跨ぎ、膝立ちで此方を 見下ろしている。 ただっぴろいリビングの部屋のフカフカの カーペットに、押し倒された状態。 「..................。」 そう、正月休みで実家で過ごしてた俺は、 元旦の昼に先輩からのお家にきて欲しい♡催促メールを受け、 実家での正月生活もそこそこに元旦にもかかわらず、蛍に会いに行った。 実家にずっと居るのも、そろそろ飽きていた頃に蛍からのメール。 俺は小言を言う母親に断りを入れて、 軽く準備して家を昼過ぎに出た。 蛍とは、学園や寮が休みに入ってから、ずっと会うことも 無く日は過ぎていっていて、会うのは一週間以上ぶりである。 想像以上の立派な高層マンションに辿り着いついた俺は、 久々に会う蛍に少し肩が強張っていた。 学園で会う姿よりもラフな格好の美しい男が重そうな扉を 開けた。 玄関に招き入れられた途端、勢いよく腕を引っ張られ、家の奥に 連れ込まれるようにして、蛍の家にお邪魔したのだが。 なぜ、なんで急に押し倒されたんでしょうか。 押し倒した張本人といえば、恐ろしいほど甘い笑顔で 綺麗な少し厚めの唇に美しく弧を描いていた。 「.....いや、急にどうしたんですか....?」 プロレスでもするのかと、運動苦手、喧嘩弱々の俺は少し身を硬く して胸の前で腕をクロスして、先輩から身を遠ざけようとした。 正直、なぜミイラが棺桶で眠るように腕を前でクロスしたのか 俺にも分からない。 でも、跨がれてるせいで、下半身が動かないので、胴体付近を何かで ガードした方が良さそうだとなんとなくやってしまっただけで........ 「.......................。」 アホ丸出しである。 「....なにそれ。.....かわいすぎるねさくらちゃん?」 「.........................。」 流石の蛍でも、俺の反応に引くんじゃないかと思っていたので、 そういえば、蛍もなかなかに変人だったと思い出した。 かわいいとかいってるから、眼大丈夫か、と思う。 そっと頭上に目線を上げると、 蛍は、俺の事を穴が開くほど凝視していた。 綺麗な垂れ目気味の眼が、まじである。 こ、こわぁ。 なんか知らんけど、めちゃくちゃ見られている。 「か、かわいくとか、ないんで.....、とにかく退いてもらっていいですか」 「いや。」 えぇ....、なんで。 怖いので目線を逸らして、 俺はそのままジッとしていた。 「ねぇ、さくらちゃん。」 視線を蛍に戻す。 相変わらず、整いすぎの容姿に、長身のしなやかな身体が間近で 俺の視界に入ってきて、居心地がわるい。 跨がれている状態から、脱出しようと身を動かすと、蛍が上半身を 屈めて、俺の顔を近距離から見つめてきた。 間近にある蛍の綺麗な唇が美しく動いた。 「キス、したい。しても、いい?」 「.....................。」 俺は、視線をそのままに、言葉を聞いて固まっていた。 きす.....、 「.......ど、どうして聞くんです..か、前は....何も、言わずに....したの..に..」 もごもごと尻すぼみになりながら、俺は答えていると、 「.................。」 一度、沈黙した蛍が聞いてくる。 「.......さくらちゃんはさぁ、俺が何でキスしたいのか分かってる?」 なぜ? 問いについて悩んで考える俺。その間に、 そっと蛍の大きな手が腹あたりにそっと触れてきた。 ピク。 俺の身体が静かに一瞬、跳ねた。 「せ、せんぱい...。」 「先輩じゃなくて、名前で呼んでよ。あと、敬語もやだ。」 撫でるそこをじっと見下ろしながら、そう言ってくるので、 やだって...。 子供のような言葉に、少し笑えてしまう。 砂糖菓子のように甘い顔で、そんな事いうもんだから 無いはずの母性?、的なものが、胸の中でうずうずと大きくなるのを感じていた。 「でも、」 そう口籠る俺の脇腹あたりを、こそばゆく撫でられ続けて、少し息が詰まる。 「....ッ..、な、慣れない、から....」 「はやく、慣れて。蛍って呼び捨てにしてよ。」 よ、よびすて。それは、さすがに.. そう言って触ってくる手をやんわり掴むけど、止めてくれない。 キスはしていいか聞いてきたのに、こうやって触れてくるのは唐突だから、 いよいよ俺は、蛍の言いたい事が分からなくて困ってしまった。 近くにあるサラッとした甘色の髪が自分の頬にかかって、くすぐったくて、 鼻から少しだけ息が、もれる。 「...さくらちゃんって、敏感...。俺、心配になっちゃう。」 なにが、と訊こうとしたけど、 蛍の手がシャツの上から俺の胸の辺りのある部分を、掠めるように撫でてきたので、 「....ッ...っ..、や、やめ...」 少し、腰が浮いてしまって恥ずかしい。 勢いよく、俺は言った。 「な、なんで、キスはしていいかさっき聞いてきたのに、  こんなふうに簡単に触ってきてッ、おれッ...ッ、......っ..」 さわさわと撫でられ擦られるように触ってくる手を必死に止めようと、 両手で蛍の手首を掴んで言った。 「...じゃあ、俺がさくらちゃんにキスしたいって どうして思うのか、はやく考えてー。」 そう言う蛍は、甘く美しく笑ってる。 た、楽しんでるだろ、この顔。 俺の反応見て。もう、やだわ。この人。 その間も、大きく美しい手が俺の胸の辺りをやわやわと揉んできたりして、 その動きが、性的すぎて、俺は頭がごちゃごちゃと酔うような感じだった。 「....ッ....ぅぅ、ひ...卑猥だ..ッ、こんな....ッ」 ん〜?、と甘く色気のある低い声が耳元で聞こえる。 更に身体が近づいて密着してきた。 もう片方の蛍の手も俺の胸辺りに触れてきて、俺の顔に熱が溜まるのを 感じる。 「......ッ..ァ、.....っ...フぅ.....」 「さくらちゃん。」 いつもより低めのよく通る蛍の声が何か従わせるような声色を含んで ダイレクトに耳に入って、背筋に響くように震えを起こさせる。 もう、なんだよ、これ。 自分の知らない身体のようで怖い。 「さくらちゃん。ちゃんと考えてる?」 「も、こ、...ッ、こんな..こと、..ッして、...」 下半身は蛍が身体に覆いかぶさるように、跨がれていて動けないので、 腰がびくつく度に、少しだけ、蛍の腰に自分から押し付けるような形になって 物凄く、恥ずかしい。 「あー.....やばい、....かわい。」 小さく息をはく音と共に、蛍がそう言うと耳に息がかかっって、 こそばゆい。 蛍の顔が俺の首に寄り添うように、密着して、耳に直接、彼の唇が触れてきた。 「俺と、さくらちゃん、きっと、めちゃくちゃ相性いいと思うなぁ.....。」 そう呟かれて、俺は身体中の熱が綺麗な唇が寄せられたそこに集まるように 身震いしてしまった。 いつの間にか、蛍の手がシャツの中に入り込んできていて、生暖かい体温が腹全体を するすると撫でてゆく。 「あ....あい、しょう....?」 恥ずかしさとこそばゆさと、なんとも経験したことのない触れられた箇所への うずきが治まらず、蛍の言葉の意味があまりよく分からないままにくちにする。 うん。ぜんぶ。何もかも、そういって顔を上げ至近距離でにこりと綺麗に笑う蛍。 それを目にした俺は、身体の中で、何かがはち切れるような、痺れるような 衝動に駆られて、少し顔を動かせばすぐ届く所にある蛍の唇に、自分の唇を 重ねた。 「.........ッ....ンっ..。」 柔らかい感触を唇で感じながら、一瞬止まった身体を触っている大きな手の温度が 直に肌に浸透してくる。 あ。あったか。てか、先輩の手、広い。 腹部全体がポカポカと蛍の手の温度で温められるようだった。 蛍といえば、俺から重ねてきたのが意外だったのか、 数秒フリーズしているようだ。 「ン.........。」 キスなど慣れていない俺は、ただ唇に己の唇をやんわりと押し付けて、蛍の柔らかい 唇の感触を感じる程度しか動けない。 こ、これ、このあと、どうしよ。 「.....さくらちゃん...、」 やっと我にかえった蛍は俺の行動をじっと確認するように見ていた。 長めの綺麗に揃った睫毛が、瞳に美しく影を落として、 身体は、密着したまま、お腹には暖かさを感じたまま。 「好きなように、動いて...。」 そう蛍が言うので、俺は辿々しく、蛍の唇を自分ので、はむと挟んだり、 すこしあいてる蛍の唇を、舌の先端でなめたりしてみた。 俺の子供のような拙い動作を蛍は、静かに受け止めてる。 「...........っ、。」 また、腹にあった手がするすると動き出した。 「かわいー...」 ぼうっとした感じで呟かれた声が聞こえ、 蛍の唇も次第に動く。 「ン...ッ、ふ.....ァッ、.....ン...」 「...ん、....くち....、すこしあけてね。」 ゆるゆると遠慮がちに開くと、蛍の唇が先ほどよりも深く 唇に密着して重なり、お互いの息が混ざり合うように篭って 蛍の熱い舌が俺の口内に収まる舌を絡めとるようにふれてくる。 「......ッ..ンっ、.....ハッ、....ハァ...ァ...」 蛍の手が、俺の胸の突起を擦るように指で、撫で、 背中にブルリと震えが広がる。 「あ....ぅ...ッ...、」 口内が焼けるようにあつくて、お互いの熱が一つに合わさって、 経験した事のないような気持ちよさを感じた。 俺は、恥ずかしくて、口を蛍から逃げる様に逸らしてしまい、 必死に胸を弄る蛍の手首を、両方握る。 「...っ....や、やめ.....ッて...、...そこ.....ッ..」 俺が、唇を噛み締めて、ふるふると顔を動かすと、 蛍の弄る力が、少し強まって、 「..ッアッ、....ぅ....ッだ、..だめ..ッ」 「きもちよくない?」 低くて腰にくる声が耳元で呟かれた。 それにも身をよじりながら、蛍の顔が見れずに俺は下を向いたまま、 潰すように転がしてくる指を止めようと握りしめる。 「せ..ッ、せんぱ「蛍って呼んで。」 耳を軽く噛まれながら、遮られ、こんなにこの人、Sっ気 あったのかと頭の端に過った。 「...さくらちゃん、腰、動いてるけど、ほら。」 そう言いながら、 胸の突起を長い指で軽く摘まれ刺激を強められる。 「....っッッ、あッ”...ぅ”....い..」 俺は、目が少しずつぼやけて行くのを感じていて、 身体が、経験のない刺激にパニックになりそうだった。 はぁ、はぁと息を溢しながら、腰がびくつく度に、 上にのっかる、蛍が履いたジーンズの厚布に自分の腰が押すように あたってしまう。 最高に卑猥なこの状況に、生理的な涙がぽろりと溢れ落ちた。 「.....やめたい?」 耳元で、そっと聞いてきた優しく甘い声。 この人、何個声使い分けてんの。もう無理。刺激が強すぎ。 俺は、一気に脱力してしまって、押し倒されてる柔らかい感触のする床に 背中を付けて、頭を落とした。 頬に熱を感じながら、声を出す。 「.....も、..先輩..の好きに、して..ください。」 抵抗も疲れた。 それに、蛍に触れられるのは、嫌いじゃない。きもちいい。 そう、眼をつぶって脱力気味に言うと、 「..おこった?」 まだ、名前も呼んでくれないし、 と小さく続けて蛍は手を止めた。 「...え..」 予想外の答えに俺は顔を上げると、 蛍が少し瞳を揺らして、此方を見下ろしている。 欲望の色が含まれながら、それを隠すように美しい眼が少し節目がちに動いた。 男の色気と雄々しい雰囲気にしなやかな美しさが 混ざっていて、本当に綺麗だと思う。 自分より体格も身長も全然違う蛍が、 落ち込んで不安そうに俺の反応を伺っている。 さっきと、全然違う。調子狂う。ほんと。 俺の身体は先ほどの行為の余韻も冷めやらぬまま、 相変わらず、心臓はどくどくと煩い。 おれら、なんでこんなことしてんだろ。 蛍が、俺に触れてく理由、何も考えていなかった。 今更な気付きや疑問が頭に次々と浮かんでくる。 「..おこって、ないよ。」 大型の猫に手を差し伸べるように、 蛍に手を伸ばした。 美しい太陽の似合う肌をした頬に触れる。 蛍は俺の腕をすぐに握った。 「いやじゃない?」 綺麗な瞳が俺を絡めとる様に、見つめられる。 「.......いや、じゃ、ない..。」 そう咄嗟に返した瞬間、 また蛍は俺を押し倒した。 は、はやい。ほんと欲に忠実だな。 でも、いやじゃない俺がいるのも事実な気がする。 床に押し倒された俺の胸に蛍は頭を摺り寄せてきた。 「ごめん。さくらちゃん。」 そう、か弱く言う蛍。 思わず自分の胸に擦りつく 綺麗な髪を撫でて梳いてやる。 やっぱ、猫みたいだな。 そんな呑気な事を考えているのも束の間、 蛍は無駄の無い動きで、また俺に向き直る。 「じゃあ、一緒に、気持ちよくなろうね。」 そう、うって変わるように極上の甘い笑顔で、 顔を上げて言った蛍をみて、 何か俺は、目の前の男の心中がますます 分からなくなったような気がした。 きりかえ、はっや。さっきのは、何だったん。

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