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「今も、LOVE?」
「あ、そういえば、快斗、何泊してくの?」
プリンを頬張りながら聞くと、快斗はふ、と笑った。
「来週木曜から、地獄の夏期講習が始まるから、そこまでかな。愁が付き合ってくれるならギリギリまでここに居るよ」
「オレはいつまででも良いよ。オレの塾の夏期講習も来週金曜からだから」
「そんな風に適当に言うと、ほんとに、ギリギリまで付き合わせるよ?」
快斗はべ、と舌を見せてそう言うけれど。
別に適当に言った訳でもなかったので、もう一度。
「別に良いけど? 快斗が居るの、嬉しいし」
「――――……」
快斗は一瞬黙って。その後、苦笑いを浮かべた。
今日は土曜日だから。
土、日、月、火、水……に、快斗が帰ればいいのかな?
「水曜に帰る?」
「うん。そうするかな。日中は持たされた参考書、少しは開かないと母さんに絶対叱られるけど」
「オレも一緒に勉強するから。てか、受験生だかんね。オレは母さんに殺される……」
快斗は、クスクス笑って。
「じゃ、勉強もしながら、遊ぼうな」
「うん。 あ。こっちに帰ってくるって、皆には言ったの?」
「いや。受験だし。お前にしか言ってない」
「あ、やっぱり? 何か誰も何も言ってこないからさ。快斗が言ってないのかと思って、オレも誰にも言わなかったんだ。良かった」
「――――……今回は、愁と居れればいいよ」
「――――……」
そんな風に言って、快斗は、ふ、とオレを見つめる。
……オレもさっき、言った。
快斗が居るの嬉しいって。
で、快斗も。
愁が居ればいいって。
――――……オレ達って、
ずっと昔から、同じようなセリフ、
言い合って、生きてきてる。
大事な、親友の時から、ずっと。
ただ、今、見つめられる視線に、意味を考えてしまうのは。
快斗の、告白のせい。
――――……快斗って……オレの事、今も……。
LOVEで、好き…?
何度も何度も考えた事がまた、頭の中を支配する。
あの時は、「何年でも待つから」と言われたけど。
……大体、答えも出ないまま「何年も待つ」なんて、できなくねえ?
付き合ってたって、気持ちなんか、冷める時は冷めるのに。
もし本当に快斗が待つ気でも、待たせたまま何年も好きでいてもらう、なんて。
そんな事させられないし。
それに、オレだってそんな何年も、考えていたくないし。
ていうか、そもそも。
……4か月、経ったけど。
……快斗の気持ちって、あの時と変わらないのかも、分からないし。
……うーん……。
やっぱり、オレから、聞くべきなんだろうか。
でも。 よくよく考えてみると。
答えも決まってないのに、聞いたりして良いんだろうか……?
自分から聞いておいて、答えはまだ、なんて言えないし。
快斗がその話に触れるまでは、
オレからは触れないでいた方がいいのかなぁ……とも思う。
こんな事色々考えて困ってるくせに、
快斗と、こんな夜に、2人きりで、過ごしてるし。
突然の告白に断れないのも、
ずっと気になってしょうがないのも、
困ってるのに、またこうやって一緒に居てしまうのも。
…それもこれも。
快斗の事が、大好きだから、だとは分かってる。
一緒に遊ぶのも、話すのも、ただボーっとしてるだけでも居心地が良くて。
快斗と居るのが、幸せだって、自分で分かってる。
あの時、そういう意味で好きだと言う快斗を、
絶対無理だって言って拒めなかったのは。
やっぱりオレは、快斗の事、
そういう意味でも、 好きなのかもしれない、と思うのだけど。
ただ、快斗に、オレも好きだ、なんて言える程、確固として本当に好きなのか分からず。
離れている間も、何回か、聞こうと思ったんだけど、
快斗からは、何も言ってこないし。
ましてや、4ヶ月も経った、今の、快斗の気持ちなんて、
もう、全然、分からないし。
やっぱり、そうなると、面と向かって、オレのこと好き?なんて、
聞けないし。
正直、今のオレは、自分の気持ちも、快斗の気持ちも、
はっきりとは、分からない状態。
一緒に居たいと言ってくれても、
それは友達の頃からずっと言い合ってて。
正直、その言葉だけでは、全然分からない。
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