12 / 58

「たまには」

  「――――……あのさ……」 「ん?」 「オレ、まだ何も答えとか……決まってないんだけど……」 「ん」  それを言っても、快斗の瞳は優しくて。  だから、突然。 ――――……覚悟を決められた。 「……聞きたい事あるんだけど、いい?」 「ん。 何でもいいよ。何?」  声も優しいし。 笑ってくれてる顔も優しい。  何だかすごくホッとして。オレは、口を開いた。 「前に言ってた事って……今もそう?」  何だか何もはっきりと伝えられていないような気もするけれど。  多分、これでも分かってくれた快斗は。 ふ、と笑った。 「今もそうだよ。そんなすぐ変わらない」 「――――……でも……」 「でも、じゃないよ。 何年でも待つって言ったろ?」 「――――……」  優しいけど、強い言葉に、言葉を奪われて。   オレは、 快斗をただまっすぐ、見つめた。 「オレを選んでくれるか、それとも他の奴を選ぶか。どっちかの答えが出るまで、待つよ」 「――――……」  だけど。でも。  そんな類の言葉しか思いつかなくて。  更に、それに続く言葉も思いつかなくて、何も言えない。  黙っていると快斗はまた苦笑い。 「あのさあ、愁。 よく聞いて」 「……?」 「オレ、お前の事大事だよ。どういう意味でも、大事。失うの、絶対嫌だ。  それは分かる?」 「……うん」  それがどんな意味でも良いのなら。  ……それは、オレだって、同じだ。 「そのオレが、お前に好きって言った覚悟ってすごいと思わない? 嫌われる覚悟までしてやっと言ったのに、こんな少しの間に、変わる訳ないだろ」 「――――……」  ……何だか激しく納得させられて。  特に何も、返す言葉が思い浮かばずに、黙っていると。 「あんまり言うと、プレッシャーかけるかと思って、あの後は何も言わないできたんだけど……」  困ったなあ、とでも言わんばかりの顔で苦笑して。  快斗は、少し首を傾げて、オレを見た。 「……オレの気持ち、疑われるんなら、毎日でも言おっか?」 「……?」 「何も言わないで居ると、愁が余計な事考え始めるんだったら、 毎日でも言うけど」 「……余計な事って、何だよ?」  聞くと、快斗はクスクス笑って。  ――――……こう、言った。 「今もオレがお前の事好きなのかなー、とか、考えてたんだろ? そんな微妙な状態で、お前がオレを選んでくれるとは思えないからさ。言っても良いなら、毎日でも、好きだって言う」  何も言えないでいるオレに、快斗は更に続ける。 「……それともやっぱり言わない方がいい? それかオレが気持ち変わったら、即言う事にしよっか? もう答えは要らないって、オレがお前に言わない限り、気持ちは変わってないって事にするか。そっちの方がいい?」  唇を噛んで。  そのまま、快斗を見つめていると。 「愁はどれがいい?」  問われて、しばらく視線を彷徨わせてしまう。 「あのさ。毎日とかでなくていいからさ」 「うん?」 「たまに、言って、欲しいかも……」  そう言ったオレに、自分で聞いてたくせに、なぜかきょとんとする快斗。 「……何?」 「んー……」  快斗が言葉を選んでるのが分かるので、少し黙ってそれを待つ。 「――――……言っていいんだ?」 「え?」 「……好きだって、オレに何回も言われるの、嫌じゃないのか?」 「――――……」  別に。 嫌では、ない。  ……なんで聞くんだろ?? 「普通は男に好きなんて言い続けられたら嫌だろうなと思ったから、言ってなかったんだけど」  ……まあ。そう言われてみたら……。  ……確かに、他の男なら、嫌だけど。

ともだちにシェアしよう!