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「期待」
「言ってて良いなら、言うよ」
「……うん。言ってほしい、かも」
頷くと、快斗はまたオレを見つめて、クスクス笑った。
「……駄目もとだったんだけど……ちょっと期待しちまうかも」
「え?」
「……何年でも待つって言ったのは……後から考えたらオレの逃げだったのかもって思っててさ。……即答させなければ、望みを持ってられる期間、長くなるだろ。――――……つまりそれだけ、絶対無理だろうなと思いながら、言ったんだけど……」
「……けど?」
快斗はオレを見つめ続けたまま、ふ、と目を細めて笑った。
「好きて言い続けて良いとか言われたら、少し期待する」
「――――……」
「だって、男に好きだなんて言われ続けるの、嫌だろ、普通はさ」
……うん。 快斗じゃなかったら、冗談じゃ、ないな。
心の中で言って。 その意味を、また考える。
「……それとも、期待はしないで待ってた方がいい?」
「――――……」
……ほんと、何言ってんだろ、快斗ってば。
「……あのさ、快斗」
「……ん」
「あの時、オレが即答で断らなかった時点でさ……そういう可能性が少しはあるって事だと思わない?」
「――――……」
オレの言葉に、快斗は何も答えずに、ただ見つめてくる。
その視線に少し困りつつも。思う事をそのまま口に出してみる。
「自分でそう思う……。絶対嫌だって思えないって事は、快斗の事好きなのかもって……」
「……ふうん」
くす、と笑って。
快斗は、視線を逸らす事なく、まっすぐ見つめる。
「……じゃあ少しは期待して待つ事にする」
「――――……」
頷こうとして、ふと気付いて、何も言えずに、黙る。
――――……そんな、期待させて、待たせた結果。
やっぱり無理だったら、どうすんだろ?
……いつになったら、ちゃんと好きだって言えるんだろうか。
そもそも――――……。
そんな日、来るんだろうか。
もし、そういう意味で絶対に嫌でもないけど、やっぱり好きでもない、なんて、そんな状態がずっとずっとずっと、続いたら。
どうしたら良いんだろうか。
「……あのさ……?」
「ん?」
「――――……もしそれで……やっぱりそういう意味では無理ってなったら……どうすんの?」
「さあ。……そん時考えるつもりだけど」
恐る恐る聞いたのに。快斗は、あっけらかんとして、即答した。
「諦めるしかないとは思うけど。今は考なくてもいいかなと思うし」
笑顔の快斗に、それでも納得行かず。
「待たせてる間の時間……快斗にとってムダになると思わないの……?」
「――――……は?ムダ?」
「……だってさ……」
「――――……思う訳ないだろ」
オレの問いに一瞬黙った快斗は。 すぐに、はっきりと、言い切った。
「全然思わないよ。待ってるその間は、オレはお前と居るつもりだし。何年か後にフラれても、一緒に居た間の思い出とかはちゃんと残るし。それでいいと、思う」
「――――……」
「……オレが勝手に言いだして、オレが勝手に待ってるだけだから。 お前が気にする必要はないよ」
まっすぐに見つめられて、そんな風に言われると。
何だか、咄嗟に何も言えなくなってしまう。
「オレ、お前の事が、本当に好きだから」
「――――……」
強い、瞳で。 まっすぐに想いを伝えてくる、快斗。
4ヶ月前も、こんな感じ。 本当に、まっすぐで揺るがない瞳をしてた。
何で、好きなんだ、オレの事なんか。そう思うんだけれど。
好きでいてくれるんだ、とは……思う。
「こんな事言ってるオレと、それでも普通に居てくれるお前の事、余計好きだし。……そんな風に待たせてるの心配してくれる愁も、やっぱり好きだし」
本当に、嫌って位――――……分かる……。
「お前と連絡できなかった日、何回かあっただろ。 疲れてどっちかが寝ちゃったり、電話した時間が合わなかったり」
「うん」
「次の日すげえお前の声聞きたくて、ほんと、やばいなーとは自分でも思うってさ。……出来たら毎日ずーっと、ビデオ通話繋げたまま過ごしたい位だし。電話する度、好きだなーて思うし、今日会ったら、余計に好きだって――――……」
「――――……っ……す、すとっぷして……」
思わず言って、オレはテーブルに突っ伏した。
「ん?……すとっぷ?」
「……恥ずかしいから、ストップ……」
言ったまま、顔も上げずに倒れていると。
すぐ、快斗の笑い声。
「可愛い、愁」
突っ伏した頭に手を置かれて、ナデナデされてしまい、咄嗟に起きあがる。
「こ、子供じゃないんだからっ」
「別に子供だなんて思って撫でた訳じゃないよ」
ムキになって文句を言うと、プッと笑った快斗に軽く流されてしまった。
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