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「あっという間?」
「どした?」
クスクス笑う快斗はもうすっかり着替え終えてる。
「さっきおばさんから電話来て、ご飯食べにきなさいって」
「…あ、うん。母さんから?」
「最初愁にかけたけど、出ないからってオレに掛かってきた」
なるべく快斗と目を合わせないようにしながら、服を着替える。
………裸の快斗に抱きしめられて、キスされる夢なんて。
しかも完全にそれ、受け入れちゃってる夢なんて。
快斗には、とても言えない……。
あーなんかオレ…。
…………この4か月。
ほんとに今も好きなのかなあ、なんて迷いながら、全然答え出せないできたけど……昨日快斗に会って。まだ少ししか経ってないのに。
……あっという間に、答えが出そうな気がしてきたような。
「愁、どうかした?」
「――――……」
布団の上でもそもそ着替えているオレに、少し不思議そうに言う。
すぐ返事が出来ないでいると、隣の布団に膝を落として片付けながら、快斗はじっとオレを見てくる。
「どした?」
「…どうも、しない…」
「……ふうん?」
ふ、と笑った快斗。
何を思ったんだか、知らないけれど。
手が伸びてきて、頭をくしゃくしゃ撫でられる。
されるがままにさせておいて、笑いながら手が離れて行くのを見送る。
それから、聞いてみた。
「快斗、今日はどうする? 何したい?」
「飯食って、散歩。んで少し勉強。したら、少し遊びにいこうぜ」
楽しそうに笑う快斗に、こっちまで、嬉しくなってしまう。
この感じ、やっぱり、楽しくてしょうがない。
「りょーかいっ」
嬉しい。快斗が、そばに居てくれて、笑顔でいてくれるの。
……触ることが、できるのも。
ぱぱっと着替えて、一緒に布団をたたんで、2人でオレの家に向かった。
「おはよーかーさんー」
「おはようございまーす」
2人で家に入ると、食事が並んだテーブルに、快斗と並んで座る。
母さんが、パンを焼いて、置いてくれた。
「よく眠れた? 夜更かししなかった?」
そう聞かれて、何時に寝たか思い出そうとするけれど、ちゃんと時計は見ずに寝てしまったので、思い出せない。
「…そんなには遅くなかったよね?」
「ん」
返事をして、クスクス笑う快斗。
「ならいいけど。快斗くん、栄子 さんから、勉強させてって連絡きてたよ」
栄子さん、というのは、快斗のお母さんの名前。
「…あ、もう言われてます……」
苦笑いの快斗。
「言われなくても、ちゃんとオレ達、勉強するつもりだったよ」
言うと、母さんは、ほんとかなーと目を細めてくる。
「ほんとほんと。……ずっと勉強は、いやだけど。 ね、快斗?」
「ん」
快斗が頷いて、笑ってる。
「まあ。快斗くん居る間は少しは仕方ないけど。 ちゃんと勉強も進めなさいよ」
「はーい」
頷いて、バターを塗ったパンを口に運ぶ。
「――――……」
流しで何かを洗ってる母さんの後ろ姿を見ながら、ふと思う。
――――……オレが、快斗に、そういう意味で好きだなんて言われてるって、母さんが知ったら……何て言うんだろう。
オレもかなり、快斗のこと、好きで……。
昨日キスしちゃったなんて言ったら……母さん、なんて言うのかなあ…。
そんなことを考えながら、ぼーーーと、パンを食べる。
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