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「迷うのは」

 4か月は、我慢してた。  ――――……毎日電話はしてたし。顔も、ビデオ通話だから見れたけど。  やっぱり、横にある笑顔とは、違う。  4か月……寂しかったんだよなあ……オレ。  快斗に頼りきりだった事に、今更だけど気づいて。  1人で頑張らないとって、思って。  快斗が居なくても、大丈夫って、思って、頑張ってた。けど。  別にやらなきゃいけないこととかは、1人でもやれてたけど。  多分一番支えられてたのは、メンタル。 「愁、食べたら勉強道具用意取りに行って、向こうに持ってこ」 「うん、わかった」  この声が、笑顔が、すぐそばにあると――――……。  嬉しくてしょうがないや。  オレ、ほんとにほんとに。 快斗の事が、大好きなんだよね……。  だから、そういう意味で好きだって言われても。  男同士だとか色々思っても……大好きが勝っちゃって、もうそれ以上、何も思えないというか。  きっと他の男に告られたら、絶対すぐ断ってる。  最大の理由は、「男同士だから」だ。  でも、相手が快斗だと、その理由で断るっていう選択肢は、無い。  快斗がオレをそういう意味で好きだと言ってくれるのなら、もうそれでいいよって言いたくなる位は、快斗の事だけが、特別に大好きなんだけど……。  ……迷うのは。    もうそれでいいよ、なんていう好きで、受け入れていいんだろうかって事。  大好きだからもうそれでいいよ、なんて。  ……それは、おかしいのかな、失礼なのかなって。  大好きすぎて、キスしても気持ち悪くない。  ……快斗のキスは、気持ちよかったから――――…好き。だけど。  友達の大好きと、恋の大好きの違いが……ほんとに分からない。  あともうひとつ迷うのは。  ――――……快斗はほんとにオレで良いのかなあって事かなあ……。 「ごちそうさまでした」  食べ終わって、2人一緒に立ち上がる。  食器を母さんの所に運んで、2人でオレの部屋に上がった。 「愁の部屋、久々」 「変わってないよね?」 「ん。そーだな」  ドアに寄りかかったまま、快斗が部屋を見回した。 「な、快斗、何の勉強するの?」 「重いからあんまり持ってこなかったんだ。とりあえず英単語覚えるのと、いくつか薄い参考書だけ持ってきた」 「オレのでできるなら持ってっていいよ」 「んー。じゃもう、一通り持ってくか。1週間あっちで勉強するんだし」 「うん」  2人で本棚から色々出して、積み上げていく。両手いっぱい持って、家を出て、快斗の家に戻った。  テーブルに勉強道具を積み上げて、ふー、とため息。 「受験生って……憂鬱だよね?」  オレの言葉に快斗が苦笑いを浮かべる。 「そうだな。ま、この1週間は一緒にがんばろ」 「ん」  快斗はいつも、前向き。  ――――…後ろ向きなこと言わないから、一緒にいると、前を向ける。  だから、遊んでた仲間も、部活の仲間も、学校の皆も、快斗のことが好きで、ついていってた気がする。なかなか、居ないと思う、こんな奴。  分かってる。――――… 快斗がオレを好きなんて、言ってくれてるのって、ある意味、奇跡みたいな気がするくらいで。  告白の答えを待たせてるなんて、快斗を大好きな奴らに言ったら、絶対めちゃくちゃ怒られる、と思う。ていうか、そもそもオレが相手って、誰も信じないだろうけど。

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