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「触る癖」

「よし。じゃ散歩いこっか」  ぽんぽん、と頭に手を置かれて。快斗の後に続く。  ――――……そうだ。  これ、いつもだったなあ。ぽん、て、オレの頭に触るの。  思わず、触られた自分の頭に手を置いていると、快斗が、ん?とオレを振り返った。 「……快斗、ぽんぽん触るの癖だよね」 「ぽんぽん? ――――……あ、これ?」  言いながら、ぽん、と頭に手をのせて、「ぽんぽんて可愛いな」とクスクス笑われる。 「なんか――――…前からよくしてたなーて今、思い出した」 「ああ…うん、してたな」  ……他の人にもするのかな。今も、向こうで、誰かにしてるのかな。  なんて、考えがふっと浮かんで。  いやいや、何考えてんだと、焦っていると。 「つーか、ちょっと間違ってるな」 「……え?」 「ぽんぽんするのは、癖じゃないよ」 「……?」  あ、そう? よくされてたような気がしてたけど……。 「じゃなくて、――――……愁に触るのが、癖なんだよね」 「――――……」  頭に置いた手に力が入って、くいと引かれて、間近でのぞき込まれて。  かあっと赤くなった瞬間。 「別にオレ、頭にぽんぽんだけしてた訳じゃないよな? 手ひいたり、肩組んだり、頭も触ったけど――――…… 愁が好きだから、愁に触ってただけ。……っとか、あんまり言うと、気持ち悪いか?」  はは、と笑って、快斗は手を離した。 「……っ」  ぽんぽん、他の誰かにしてるのかなとか想像して、嫌な気持ちになったり。  ――――……触りたいからとか言われても、全然嫌じゃなかったり。  そんな、気持ち悪いなんて、全然思ってないのに。  快斗が離した手を、オレは咄嗟に、ぱ、と掴んだ。 「……愁?」 「……気持ち悪くなんか、ないから」 「――――……」 「……そんな風に、言わないでよ」 「――――……」  掴んでた手を外されたと思ったら逆に掴まれて、引かれて、抱き締められてしまった。   「……あーもう……愁……」 「――――……っ」 「……可愛いけど…… 襲われたくなかったら、ちょっと加減して」 「――――………」  ぎゅー、と抱き締められて。  笑う快斗が、そんな風に囁く。  みるみる顔に熱が集まっていく。  心臓が、ドキドキして、快斗にも聞こえそうなくらい。 「――――………外行こっか、これ以上暑くなる前に散歩したいし」 「う、ん。行く」  ばくばくの心臓に、ぎゅ、と目をつむりながら、答えると。  快斗は、ふ、と笑ってオレを離した。

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