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「快斗のことばっかり」
快斗と一緒に歩くの、久しぶり。
いっつもそうだったけど。相変わらず、オレに歩幅を合わせてくれる、快斗。足の長さ違うから、ほんとなら置いて行かれる気がするんだけど。
優しいんだよね……ほんとに。
オレは、快斗にいっぱい助けてもらって、優しくしてもらって、人生楽しくしてもらって、これで好きにならないはずないって、思っちゃうくらい、なんだけど――――…。
なんで快斗は、オレのこと、好きとか言うんだろう?
一緒に居すぎちゃったから、勘違い、しちゃったのかな。
一緒に居ないとダメとか、思っちゃったりしたのかな。
それがもし勘違いって気づいたら。
……やっぱり、どこかで、冷めちゃうんじゃないのかな。
そしたら、その時、
オレ達って、友達でもいられなくなっちゃうのかも……。
って、オレはいったい何をどこまで考えてるんだろう。
どこまで考えて、答えるべきなんだろう。
分からなくなってきた。
「あんまり変わってないな」
歩きながら、快斗がそう言って笑う。
「4か月だもん。そこまで大きく変わんないよね」
「んーそうだな。あ、でも、ここにあったアパート無くなってる」
そういえば、昔からあったおんぼろの誰も住んでいなかったアパートが取り壊されたっけ。今は空き地になってて、「売地」と看板が立っている。
「なあ、愁はさ、気になる女子とか、居ないの?」
「――――……」
「4か月もたてばさ。色々変わるじゃん。3年になってクラスも変わったろ。いいなと思う子、居ないの?」
「――――……」
外で何の話だ、と思ったけど、よく考えれば、誰に聞かれても、別に普通の話で。周りに人も居ないし、そっか、気にし過ぎか……。
……好きな女子って……。正直なとこ……。
――――……快斗に好きだなんて言われてからずっと。
……誰にも目が向けられなくなったというか。
……そんなこと、考える余裕が、自分になかったというか。
オレの中って、快斗が側に居なくなっても、快斗の事ばっかりだった気がする。
「……快斗が、居なくなる時、すごいこと言ってくから……」
「ん……?」
「他の子とか、そういう風に見てない……」
言うと、快斗は、ああ、と苦笑い。
「……なんか、ごめんな?」
そんな風に言われたけど、別に、謝られるような事でもない。
快斗の告白が、ただ、オレの中で大きかっただけで。
それはオレの問題で……快斗が謝るようなことじゃ――――……。
「でも、それって……お前には何か悪いけど、オレは嬉しいかも」
そんな風に言うから、オレが見上げると。
ふ、と快斗が笑った。ちょっと困ったみたいに。
「別に、悪くないよ?」
すぐ、そう言うと。
快斗は今度は普通に微笑んで、またオレの頭をポンポン、と叩く。
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