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「返答に困る」

 なんて答えようかなと思った瞬間、道の先に、友達を見つけた。 「おー、愁。おはよー!」 「啓史(けいじ)。おはよ」  オレと啓史が挨拶すると同時に、横で快斗も「おー、啓史」と言った。  最初、快斗だと思わなかったみたいで、近づきながらマジマジと顔を見て。 「……って、あ!! 快斗?! 快斗じゃん!!」 「久しぶり。元気そうだな」  驚いた顔と、大きい声に、快斗が苦笑いを浮かべている。 「何、どしたの、帰ってきたの?」 「いや。夏休みだから、少し来ただけ」 「どれくらい?」 「たぶん来週まで」 「何だよ、帰ってくんなら連絡しろよー!愁んとこ泊ってんの?」 「いや、自分の家。食事は愁ん家でお世話んなってるけど」 「今日午後さ、勇人(ゆうと)たちと遊ぼってさっき話しててさ。ちょうど愁にも声掛けようと思ってたんだけど。快斗もいるなら、皆喜ぶし、一緒に遊べる?」  うん、まあそうだよね、皆も快斗と遊びたいよな。  そう思ったら。快斗がちょっとテンションを押さえた声で。 「あー……ちょっと、こっち居る間、色々用事もあるし、あんまり遊べないかも。だから、皆には連絡してないんだよね」 「えー、そうなの? 今日の午後は?」 「んー……もし遊べそうなら、連絡する、て事でいい?」  快斗の言葉に、啓史はちょっとつまらなそうにしながらも、まあしょうがねーか、と頷いた。 「愁は? 遊べる?」 「あ、オレ、は――――……」 「愁もなんだよ、ごめんな? 遊べそうなら絶対連絡するから」 「ん、分かった。絶対遊ぼうぜ、皆集めるから」 「んー」 「連絡しろよー!」  啓史と別れて、2人になってから、快斗を見上げた。 「いいの? 遊ばなくて」 「ん。まあ……愁が遊びたいなら、遊んでもいいよ。そん時は連絡すればいいよな?」 「……快斗はいいのか? 皆と遊ぶの好きだろ?」 「んー……好きだけど。 愁と居れる時間、今回は、限りがあるしさ」  そんな事を言って、またオレを見つめてくる。 「愁取られたくないし」 「……それ言うなら、オレを取られるんじゃなくて、快斗が皆にもってかれると思うんだけど……」  逆だよ逆。何言ってるんだろうと、苦笑してしまう。 「やっと愁に会えたからさ。出来たら、愁とだけ、ずっと話してたい」  ――――……もう、ほんとに、返答に困る。

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